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2016年06月27日07時29分

【経済】キャメロン首相の危険なギャンブルで英国の終わりの始まり


直前の予想を大きく覆して、英国の国民投票で同国が欧州連合(EU)から離脱することが決まった。今回の国民投票の実施を決めたキャメロン首相は辞意を表明することになった。
 元々今回の国民投票はメリットが少なくリスクが無限大という割に合わないギャンブルだった。投票で残留になると踏んだキャメロン首相の目的は党内の引き締めと求心力の回復という小さなものだったが、もし離脱となると英国の損失はどこまで広がるか分からないという惨事を引き起こすというもので、なぜ実施するのか理解しがたいものだった。
 そもそも、国政上の重大かつ複雑な政治問題を直接民主制的な制度で決めるのは非常に危険である。大衆の一時的な感情や雰囲気で国政上の重大問題が一気に決まると「拍手と喝采の政治」となり、ナチスのような例も生んだ。身近な問題である地方政治は直接民主制に馴染みやすいが、国政上の重大な問題は選挙で選ばれた「選良」が専門的かつ冷静な議論をして国の将来にとって最適な決断を下して行く(間接民主制)のがやはり正しい道筋なのである。
 今回の件は、安易に国民投票を使ってはいけないことを証明したものともいえ、国会での議論を深めないまま国民に決断を丸投げしたキャメロン首相は、危険なギャンブルを犯し、かつそれに大失敗した愚かな首相として永遠にその名を歴史に刻むことになった。
 今後英国はEUとの関係で現在の特権的な地位は認められなくなり、欧州でのプレゼンス低下により金融市場での存在感も失われることが予想される。貿易と金融の両面からのダメージで英国は長期的に衰退の道を辿らざるを得ない。
 EU側も英国に対して厳しい態度で臨むだろう。甘い態度を取れば、英国のように離脱する国が次々と出てくる可能性が生じるからだ。EU側は離脱すると大変に不利益であるということを示す必要に迫られる。
 また、今後英国のようにEU離脱を求めて各国の反EU派が国民投票を求めてくることが予想されるが、英国の例をみて、各国の欧州統合を支持している政権下においては、EU離脱の是非を問う一発勝負の国民投票は実施され難くなったといえよう。また、英国の混乱と衰退が明らかになれば反EU派の勢いも削がれていくことも考えられる。「離脱ドミノ」は経済的合理性を超えるもっと大きな波が生じない限り難しい。特に他国から援助してもらっている側の国は離脱しにくい(ギリシャのケースが好例)。
 なお、今回の英国のEU離脱で金融市場に大きな混乱が起きているが、これはかなり過剰反応といえよう。英国のGDPは世界の4%程度にすぎず、またEU各国との関係はこれから2~7年程度をかけてじっくり構築されるためすぐには何も変わらない。国や金融機関に信用リスクが極限まで高まっていたリーマン・ショック時とは状況が全く違うのに、リーマン・ショック時以上の暴落(某国株式市場等)などは明らかに行き過ぎだ。よく見ると、先週の世界の株式市場における上昇率1位(下落率ではない)は英国(FT100指数)である。
《YU》

 提供:フィスコ

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