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2016年06月21日17時38分

【特集】カイオム Research Memo(4):研究開発プロジェクトの選択と集中、筋肉質の組織体制作りを進める

カイオム <日足> 「株探」多機能チャートより

■カイオム・バイオサイエンス<4583>の今後の見通し

(1) 2016年12月期の業績見通し

2016年12月期の業績見通しを会社側では開示していない。創薬事業について現段階で合理的な業績予想の算定が困難なためだ。

今期の事業方針としては、創薬支援事業の促進による安定的な事業資金を確保しつつ、企業価値拡大に向けた初期臨床開発コスト捻出のため、研究開発プロジェクトの選択と集中を行っていくほか、筋肉質な組織体制の構築を進めることとしている。研究開発費(人件費含む)は、前期の828百万円から585百万円に抑制する計画となっている。

また、適正な人員体制にするため、2016年5月に希望退職者の募集を実施した。当初予定の11名に対して8名の募集があり、6月末に退職する。自己都合退職も含めると、おおむね当初予定の人員を確保し、従業員数は前期末の60名から、50名程度となる見込みだ。人員の減少による固定費削減効果は、年間ベースで100百万円程度と見られる。なお、当第2四半期(2016年4月?6月)において、43百万円ほど見込んでいた特別退職金が25百万円ほど特別損失として計上される。

創薬支援事業の売上高については、前期の246百万円から227百万円と若干の減少を見込んでいる。前期は旧(株)リブテックとヤクルト本社<2267>の「LIV-1205」に関するライセンス契約終了に伴う清算手続きで、24百万円の一時収入が発生した反動による。第1四半期の通期計画に対する進捗率は20%となっている。今後、創薬支援サービスやADLibRシステムの技術導出契約獲得に向けた取り組みを進めていく。

(2)完全ヒトADLibRシステムの取り組みについて

同社は2014年3月に「完全ヒトADLibRシステム」の構築に成功し、技術導出に向けた営業活動を進めてきたが、同技術でビジネスを展開するためには抗体の機能の証明・薬効の評価が必須であると認識し、パイプラインとして取り扱える開発ステージにある先行品により、治療薬につながることが期待されているターゲットに対する抗体作製に注力している。

現在、複数のターゲット(抗がん剤や感染症治療薬等)において抗体作製を進めている段階で、着実に成果が出始めているようだ。今後は複数の抗体候補を作製したうえで、順次、動物モデルでの試験に入ることを目標としている。動物実験で薬効が示されれば、当該抗体そのものが先に導出される可能性があるほか、完全ヒトADLibRシステムの技術導出の可能性も高まるだけに、今後の動向が注目される。

また、オリジナル及びマウスキメラADLibRシステムについては、国内大手製薬企業等との新規抗体作製ビジネスを継続しているが、今後は、個別契約から包括契約獲得に向けての取り組みを強化していく方針となっている。

(3)成長戦略と開発パイプライン

長期的には、創薬支援事業で安定的な収益を獲得しながら、創薬事業を成長ドライバーとして企業価値の拡大を進めていく戦略だ。このため、「戦略的アライアンスの推進による創薬基盤技術の強化」及び「パイプラインの拡充」に今後注力していく方針となっている。

戦略的アライアンスとして、ADLibRシステムと他の創薬技術の融合を図ることで、創薬基盤技術を強化し、有望な医薬シーズの獲得を進めていく。アカデミアや国内製薬企業等との共同研究による創薬開発技術の採用・導入、リブテックの吸収合併による薬効評価やリード抗体の導出ノウハウを吸収したほか、2015年には感染症領域でEBウイルスを用いた完全ヒト抗体の作製・開発実績のあるイーベックに資本参画した。今後もADLibRシステムと相補的な技術を持つ企業との提携などは積極的に進め、従来技術では獲得が極めて困難なファースト・イン・クラス抗体の作製に重点的に取り組み、パイプラインの拡充に取り組んでいく考えだ。

また、パイプラインの拡充について、従来は前臨床開発段階で導出活動を行っていたが、今後はリード抗体の価値を最大化できるよう、初期臨床開発段階まで自社で行っていくことも検討している。現在のパイプラインの状況は以下のとおりとなる。

a) LIV-1205
「LIV-1205」は肝がん等の難治性がんを標的としたファースト・イン・クラスの治療用抗体候補で、細胞膜タンパク質のDLK-1がターゲットとなる。DLK-1は正常な組織ではほとんど発現せず、がん細胞において発現が増強することから、副作用の少ない治療薬として開発が期待されている。「LIV-1205」は単独でも動物モデルにおいて、顕著な腫瘍増殖阻害効果を示す結果が得られている。ADC開発用途でADCT社と開発オプションライセンス契約を2015年に締結しており、現在はnaked抗体の導出活動を行っている。

b) LIV-2008/LIV-2008b
「LIV-2008」は多くの固形がんを標的としたベストインクラスの治療用抗体候補となる。ターゲットは細胞膜タンパク質のTROP-2であり、異なるエピトープ※を認識する2つの開発候補品(LIV-2008、LIV-2008b)が存在する。TROP-2は、様々な固形がんで発現が増強することが確認されており、がん治療のターゲットとして注目されている分子である。「LIV-2008」は単独でも動物モデルにおいて、複数のがん種に対し、顕著な腫瘍増殖阻害効果を示す結果が得られている。また、「LIV-2008b」は、標的抗原に結合した後でがん細胞内に取り込まれるインターナリゼーション活性を有しているため、ADC(抗体薬物複合体)抗体としての開発も期待されており、2016年3月にはADCT社とADC開発用途での開発オプションライセンス契約を締結している。現在は、「LIV-2008」のnaked抗体での導出活動を行っている。

※抗体は抗原の特定の構造を認識して結合するが、その構造の一部分のこと。

c)抗セマフォリン3A抗体
抗セマフォリン3A抗体については、適応領域として目指していた「敗血症等により誘導される播種性血管内凝固症候群(DIC)モデル」等での薬効試験において期待していた追加データの取得が困難となったため、新たな適応領域での導出活動を進めている。共同研究先である横浜市立大学大学院の中村史雄(なかむらふみお)准教授、五嶋良雄(ごしまよしお)教授らの研究グループが、英国科学雑誌「Nature Communications」(2014年10月31日オンライン版)に掲載した論文によると、アルツハイマー病や中枢神経系の再生領域において、新たな治療法の開発につながるセマフォリン3Aの作用メカニズムを解明したとしており、今後こうした領域での治療薬の開発が期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《HN》

 提供:フィスコ

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