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【特集】ワコム Research Memo(8):デジタルペンとインクで新たなデジタル文房具市場を生み出す

ワコム <日足> 「株探」多機能チャートより

■戦略経営計画SBP-2019

(3)ブランド事業の成長戦略

主力のクリエイティブビジネスについてワコム<6727>は、ディスプレイとモバイル両分野の製品を強化してクラウドを加速させるほか、3Dデザイン&モデリングへの対応充実化でユーザの拡大を図ること、既存ユーザに新たな価値を提供する新規ビジネスの創出などを成長戦略として挙げている。

コンシューマビジネスでは、デジタルペンとインクを活用して新たなデジタル文房具市場を生み出すことや新たなコンシューマコミュニティと販路を作り出すことなどを挙げている。また、ビジネスソリューションでは、デジタルインクワークフローとセキュリティソリューションを提供すること、高付加価値な業務向けモバイルソリューションを提供することなどを挙げている。

こうした成長戦略の結果として、同社はブランド製品事業について、2019年3月時にセグメント売上高を75,300百万円と計画している。2015年3月期実績を起点とする4年間の年平均成長率(CAGR)は14.6%となる。内訳としては現時点で最も構成比が高いクリエイティブ市場向けタブレットがCAGR1.9%と低い伸びにとどまる一方、クリエイティブ市場向けモバイルと同ディスプレイ(液晶一体型)がそれぞれ、30.7%、17.2%のCAGRと計画している点が注目される。コンシューマビジネスとビジネスソリューションについても、発射台が低い点を割り引いてもそれぞれ32.0%、28.8%と高い伸びを計画している。

さらに注目すべきは営業利益であり、2019年3月期には16,640百万円、営業利益率22.1%が計画されている。22.1%の営業利益率は2010年3月期実績と並ぶ水準だが、これについては、グローバル組織体制に移行した2016年3月期より、セグメント間の費用便益効果の公平性を確保するため、25億円相当の販管費がブランド製品事業からコーポレート共通費用に移管されており、収益性の分析をする場合、連続性が途切れていることに注意が必要だ。セグメント別営業利益の開示が始まった2010年3月期から2011年3月期は20%台の営業利益が確保されていた。その後、グローバルITインフラ投資の関連費用、モバイル化やクラウド対応の開発といった先行費用などが重くなるなか、営業利益率が縮小しており、2016年3月期は16.4%(費用移管分の売上高に対する比率5.1%を調整した移管前のベースでは10%代前半)に留まった。しかし、2017年3月期には新商品効果やITインフラ投資効果の発現で20.3%(移管後のベース)に伸長する予想となっている。投資効果の発現により中期的にも20%台の営業利益率が維持される可能性は高いと弊社ではみている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

《HN》

 提供:フィスコ

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