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【経済】求人サイトの今、「職場紹介動画」の可能性 <産業最前線>

ユーザー満足度No.1で使い易さアピール
職場で「仲間」を増やすという付加価値

―動画コンテンツで先駆するディップ―

●「一億総活躍プラン」で要注目の業態

 アベノミクスは思うように内需を喚起できず、成果が上がっていないとの厳しい見方もあるが、人材派遣や求人情報などを手掛ける人材サービス関連業界においては順風満帆、高水準の求人需要を背景に好業績で輝きを放つ企業の宝庫といってよい。

 政府がまとめた「ニッポン一億総活躍プラン」において、柱となる“働き方改革”では「同一労働同一賃金」実現に向けた動きを目玉の改革に掲げ、少子高齢化を背景とした人手不足の課題解決に積極的に取り組む構えをみせている。過去15年間で就業人口の数はおよそ170万人減少している。今回、安倍政権が打ち出した渾身の“総活躍プラン”によりこの流れを反転させ、東京オリンピック開催年度の2020年度に117万人、さらに25年度には204万人の労働者数増加を目標としている。

 これは人材サービス全般に展開する企業にとっても大きな商機となり得る。そうしたなか、厚生労働省が5月末に発表した4月の全国有効求人倍率は、前月比0.04ポイント上昇の1.34倍となり、1991年11月と並ぶ24年5カ月ぶりの高水準となった。業種別の新規求人では宿泊や飲食など消費関連のほか、医療・福祉分野などで人手不足感が拭えない状況にある。

求人情報を扱う企業に強力な追い風

 当然ながら労働需給の逼迫は、企業と人材の橋渡し役である求人情報を扱う企業にとって、収益機会をもたらすこの上ない追い風となる。求人広告の掲載件数は2008年のリーマン・ショックでいったんは落ち込んだものの、2010年以降は再び顕著な増加傾向をたどっている。

 特に近年は、求人サイトと紙媒体とを比較した場合、スマートフォンの普及加速が後押しするかたちで求人サイトの伸び率が際立っている。2016年4月時点で求人サイト件数は約71万2000件、対して紙媒体合計でも52万件弱にとどまっており、求人広告は完全に“インターネットの天下”となっている状態だ。となれば需要あるところに経営の舵を切るのは当然、業界内でもネットにシフトする動きが顕著となっている。しかし、ネットに切り換えたとしても競争の波にさらされることは避けられず、実績やノウハウに長けた企業が相対的に存在感を浮き彫りにするのは資本主義の常といってよい。

 そのなかで勝ち組筆頭に位置しているのがアルバイト募集サイトなどを運営するディップ <2379> だ。主力サイトの「バイトル」はAKB48グループを使った宣伝効果が発現し利用者の急増に結び付いている。求人需要が旺盛ななかで増勢一途の応募者数に合わせて企業の広告出稿数も増加、需給のタイト化は広告単価の上昇にもつながり、好循環を享受している状況だ。

●AKB48グループ起用で訴求力、動画がキラーコンテンツに

 ディップはAKB48グループの採用で若年層への訴求力を高めることに成功しているが、それ以外にも元ラグビー日本代表をイメージキャラクターに起用して「仲間」にフィーチャーするなどの工夫も施されている。求人サイトの認知度向上はもちろん、アルバイトで働くことに対しての付加価値の訴求や、リアルイベントとの連動などユニークなプロモーションが好評を博しているようだ。

 サービス開始当初からネット専業であった強みが随所に生かされているが、そのなかで職場紹介動画は同社のキラーコンテンツである。動画はクオリティーの高さと企画性が重要であり、同社はそれを内製で行っている。また、主婦層などパート層向け、および社員層向けのチャネルの強化にも余念がない。ここでもスマートフォンの普及がネット優位の構図を築き上げている。

 17年2月期業績は営業利益段階で前期比19%増の85億円を見込んでいるが、増額修正期待が強い。株価は昨年7月につけた上場来高値3218円(株式分割後修正値)の更新を目前にとらえている。

 同社のビジネスモデルは容易には真似できないが、その業績成長力は動画コンテンツの訴求力の強さを十二分に知らしめており、今後、求人サイトは動画分野が顧客獲得の主戦場となっていく可能性を示唆している。


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