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2016年06月10日16時20分

【特集】エレマテック Research Memo(5):根本的な競争力や産業構造の中に占める重要性は損なわれていない

エレマテック <日足> 「株探」多機能チャートより

■エレマテックに対する投資視点

前述のように、エレマテック<2715>は各時代の成長市場の波をシームレスに捕まえて持続的業績成長を果たしてきた。ここ数年の成長けん引役はスマートフォンであるのは、広く知られたところだ。2016年3月期第2四半期決算を踏まえた前回のレポートで、弊社は「スマートフォンへの依存度の高さは、当面は同社にとって(懸念要因ではなく)成長要因であり続けると考えている」と述べたが、2016年1月?3月期のスマートフォンの急激な生産調整により同社が下方修正に至ったのは紛れもない事実だ。

同社は2017年3月期業績予想において、増収減益を予想しており、2009年3月期以来の2期連続経常減益となる見通しだ。これまで弊社では、同社の極めて安定的な業績成長性を評価し、そこに投資機会があると考えてきた。この点について改めて検討してみたい。

総務省「平成27年版 情報通信白書」によれば、日本のスマートフォン世帯保有率は2014年で64.7%となった。2010年の9.7%から2013年の62.6%まで急速に上昇したが、2014年は伸び方が鈍った印象だ。参考までに携帯電話の世帯保有率は94.6%で、2003年に94.4%に達して以来、横ばいが続いている。また、総務省の「ICTの進化がもたらす社会へのインパクトに関する調査研究」(平成26年)によれば、スマートフォンの個人保有率は日本が53.5%に対して、米国とフランスが約70%、英国が80%、韓国、シンガポールが約90%という結果が出ており、先進国においてはかなりの程度まで普及が進んでいる。

こうした事情を反映して、2015年の世界スマートフォン出荷台数は、前年比10.3%増の1,292.7百万台となった。2014年の前年比約25%増という急増ペースからは大きく鈍化している。また、2016年については前年比8.1%増と更なる伸び率低下が見込まれている状況だ(数字はいずれも台湾の調査会社Trend Forceによる)。

こうした状況のなか、同社に対する投資視点として、弊社では以下のように考えている。

(1)スマートフォンに関しての考え方

スマートフォン市場は一時の急成長ペースから鈍化したとはいえ、成長は今も続いている。そうしたなかで同社の売上高に急ブレーキがかかったのは、同社納入品の最終顧客に当たるスマートフォンメーカーの生産調整によるものだ。今回の生産調整に際して、同社の取扱商材が競り負けたという状況にはないため、スマートフォンの生産回復に追随して収益を回復できると弊社では考えている。新製品の生産開始のタイミングについては2016年末のクリスマス商戦を考えている。そこから生産日程を逆算すると、同社が提供する関連部材の需要立ち上がりのタイミングは今夏になってくるだろう。

同社の強さの本質は顧客の分散にあると指摘したが、それはスマートフォンにおいても同様だ。すなわち、同社がスマートフォンに関して、取引先や取扱品目を拡大させているかどうか、その進捗も重要な視点ということだ。同社の企業規模だと、1つのメーカーの主力機種に何らかの商材を納入できれば、その業績インパクトは顕著となる可能性が高い。これに関してはことの性質上、同社サイドから公表されていることはほとんどないが、弊社では、過去の例に照らして何らかの新たな商談が進捗しているのではないかとみている。

(2)新市場・新商材についての考え方

新市場・新商材への移行は、言うまでもなく同社にとっての最大の成長戦略だ。この点で弊社が期待するのは、第1に自動車市場がある。同社は2012年に豊田通商グループ入りしたが、それ以降にスタートした自動車市場向けの拡販策が収益化してくるのが、2018年3月期の半ばからとみられる。

またディスプレイ分野は、同社にとって引き続き有望市場だ。同社はLCD関連部材では大きな存在感を示しており、今後予想される有機EL市場の本格立ち上がり期においても、最適な部材の供給を通じて、収益に結び付けることが可能だと弊社では考えている。現在の主力であるLCD関連部材と有機EL関連部材とを代替関係で捉える向きもあろうが、それを同社への懸念材料と考える必要はないというのが弊社の考えだ。長期的にはそうなる可能性は否定できないが、ここから3?5年の時間軸では両社は共存関係になると弊社ではみている。理由は有機EL側の供給能力や品質問題、コストなどの問題から、一気には代替が進まないと考えているためだ。このことは、同社にとっては単純に事業機会が増加することを意味すると考えている。

総括すると、同社の2017年3月期の減益予想について、過度な懸念は不要だということだ。売上高は着実に成長する見通しとなっている点こそが重要だと考えている。減益の理由は商品構成の悪化によるものであり、同社の根本的な競争力や産業構造の中に占める重要性はまったく損なわれていない。今後売上高の成長が続くなかで利益も自ずとついてくるものと弊社では考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

《HN》

 提供:フィスコ

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