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【特集】馬渕治好氏【燻る政策期待、漂流相場の先に待つのは?】(1) <相場観特集>

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

 財政出動を絡めた景気刺激策への期待感が東京市場に底流している。前週末に開催された主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議では、財政政策に向けた結束には至らず、週明けの株価は軟調展開を強いられたが、売り一巡後は下げ渋った。伊勢志摩サミットや7月の参院選を控え、政策発動への期待が依然根強いなかで、マーケットは果たして上値を追うことができるか否か。また、ここで拾うべき銘柄は何か。相場を幅広くウオッチングするプロの声をまとめた。

●「6月中に日経平均1万8000円台視野」

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

 東京株式市場は薄商いのなか方向感が定まらず、日経平均株価は1万6000円台の狭いレンジを彷徨(ほうこう)する気迷い相場の体を示しているが、今後は徐々に上値の可能性が高まるとみている。

 主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議では、各国それぞれが経済成長を促す方向で取り組むことは確認されたものの、財政出動で協調するというコンセンサスは得られなかった。ただし、これは世界的な経済への危機感が後退している現状、想定の範囲内であり、失望売りの材料にはあたらない。安倍政権にすれば、今回のG7は今週26、27日の日程で行われる伊勢志摩サミットに向けた地ならしの位置付けであったと思う。

 安倍首相の各国首脳への呼びかけは、少なくとも日本は財政出動を伴う景気刺激策を実施するという意思の表れである。ここにきて消費増税延期に自民党内で否定的な意見も出ているとはいえ、結局は延期する方向で固まるとみている。また、既に今年度の予算執行前倒しが指示されていることから、下期は予算の実行額が減少するかたちとなり、補正予算を組む蓋然性が高まっている。その規模は3兆~5兆円規模にとどまると予想するが、全体相場にポジティブに作用する可能性は高い。

 為替市場も1ドル=110円近辺で強弱感を対立させている状況であり、ひと頃のような急激な円高にリンクさせた相場の売り崩しも鳴りを潜めている。全体相場は政策期待を底流に、総合的に判断してここから大きく下値を試すような展開は想定しにくい。

 また、仮に消費増税の延期や補正予算編成などの実行を前提条件に加えなくても、上値余地は十分だ。企業のファンダメンタルズ面との実勢比較で日経平均は1万8000円台を回復して何ら違和感はない。今の株価水準が売られ過ぎなのだ。政策発動がなくても6月末までに1万8000円を上回ってくるケースが想定される。一方、下値についてはイレギュラーでもう一段振られる場面はあっても、1万6000円ラインを下抜ける公算は小さいとみている。

 物色対象については、為替の過度な円高警戒で売り込まれたトヨタ自動車 <7203> をはじめとする大手自動車株や、機械セクターでコマツ <6301> 、ダイキン工業 <6367> などを注目。このほか、政府が鉄道、橋梁、発電機などのインフラ輸出に前向きに取り組む姿勢をみせるなか、総合重機トップの三菱重工業 <7011> や川崎重工業 <7012> 、橋梁では横河ブリッジホールディングス <5911> などをマークしたい。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(まぶち・はるよし)
1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程終了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「勝率9割の投資セオリーは存在するか」(東洋経済新報社)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。


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