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【特集】急騰劇相次ぐ、バイオ株繚乱! <うわさの株チャンネル>

ペプドリ <日足> 「株探」多機能チャートより

 権利取り最終日を通過し、実質新年度相場に突入した29日の東京株式市場。売りにやや押され気味の展開とはなったものの、権利落ち分を考慮すれば地合いの強さが光った。ただ、日経平均1万7000~7300円は滞留出来高の多いゾーンで上値も重い。主力株は戻り売りの洗礼を浴びやすく、必然的にフィンテック自動運転車関連などをはじめ、旬の物色テーマを拠りどころに中小型株への投機資金の攻勢が目立つ。

●小野薬、そーせいに続く次の主役探し

 そうしたなか、ここにきて短期マネーの流入が加速し、テーマ性を浮き彫りにしているのがバイオ関連株だ。昨年秋口以降に大相場を形成した小野薬 <4528> やそーせい <4565> [東証M]などに追随する動きが随所にみられ始めた。

 きょうは、前日28日に株価を急騰させ上場来高値圏を舞ったペプドリ <4587> が、その余韻冷めやらぬなか売り物をこなし続伸すると、カルナバイオ <4572> [JQG]がそれを横目にストップ高、グリンペプ <4594> [東証M]、ナノキャリア <4571> [東証M]なども、“本日の主役は自分だ”といわんばかりの上げ足をみせ、その存在感を示した。

 また、これは個別材料の発現による局地的物色にとどまる気配はない。買いの対象はバイオセクター全般に及び、テラ <2191> [JQ]、J・TEC <7774> [JQG]、タカラバイオ <4974> [東証M]、新日本科学 <2395> 、コスモバイオ <3386> [JQ]、PSS <7707> [東証M]、ラクオリア <4579> [JQG]、セルシード <7776> [JQG]なども軒並み上値を指向するまさに“バイオ株繚乱”の様相を呈した。

 市場全体のエネルギーが不足気味の今の地合いでは、外国人売りの圧力などが意識され主力株の本格的な戻りは期待しにくい。こうした見方が、目ざとい個人投資家資金のコンセンサスとして今の相場の方向性を支配している。

●再生医療で上昇相場再始動へ

 最近は値の軽い中小型株を循環物色する動きが主流となっているわけだが、なかでもバイオ関連は相場として比較的新鮮味がある。3月は17~19日にかけて「日本再生医療学会総会」が大阪国際会議場で開催されたことや、それに歩調を合わせるかのように、iPS細胞に絡むニュースが相次いだ。京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥氏のメディア登場などもタイミングよく、バイオ関連銘柄を刺激する。

 足もとのバイオ関連人気について、松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは「店内でも個人投資家の参戦が目立っている。バイオ関連セクターは再生医療の金看板を背に新興市場でも特に個人投資家資金の関与比率が高い。2月初旬から中旬にかけての全体相場調整局面ではとりわけ信用取引に絡み投げ売りが噴出したセクターでもあるが、ここで投げさせられたことが、株式需給面から上値を軽くして3月の反騰相場の伏線となった」と指摘している。

 値動きの速さが個人投資家にはたまらない魅力だが、いうまでもなく、需給思惑のみで実が伴わないというマネーゲームとは意味合いが違う。バイオ関連人気は「iPS細胞」をキーワードに、官民学の政策や頭脳の糾合が相場の下地となっているのだ。

●政策期待と民間の思惑が融合

 政府は予算面、法律面の双方から再生医療分野の深耕に全面バックアップ体制を敷いている。2014年11月に再生医療の実用化を目指す「再生医療安全確保法」と「医薬品医療機器法」(旧薬事法)の関連2法が施行、それに先立って13年にはiPS細胞による再生医療分野に、22年度までの10年間で計1100億円の研究費を支援する方針を決定している。

 また、iPS細胞は再生医療だけでなく創薬分野でも活躍が必至であり、民間企業も業界の垣根を越えて虎視眈々だ。既に武田 <4502> は15年春に京都大学iPS細胞研究所と共同研究契約を締結し、10年間で320億円の研究支援を行うことを決めている。富士フイルム <4901> も先端医療開発に向けた特区となる川崎市殿町に開発拠点を設け、再生医療製品を実用化し、日本発で世界に供給していくことを目指している。

 このほか、直近では三井物 <8031> が新薬開発の受託業務大手の米クインタイルズなどと連携して、総額1000億円規模の新薬開発支援ファンドを立ち上げたことが話題となったが、こうした動きは投資先の大手製薬会社などを通じ、協業体制をみせるバイオベンチャーにも活力を与えることになる。

●12兆円の成長市場が待つ

 個人投資家層からの支持が厚い株式評論家の雨宮京子氏は「再生医療やiPS細胞といったテーマはグローバルでみても東京市場だけが盛り上がっている固有のテーマ。逆にいえば、日本が同分野で世界に先駆する可能性が高いことを暗示している」という。フィンテック自動運転車ドローンなどとは、切り口の違うテクノロジーだが、人間の生命にかかわる分野で政策支援も十分見込まれるだけに話題性も枯れることがないという見方を示す。ただ、一方で「一部の銘柄を除いて出来高流動性に乏しいものも多く、値動きだけにつられて買いを入れるとヤケドすることもある」(雨宮氏)と投資リスクに警鐘を鳴らすことも忘れない。2月の急落時には板の薄さが下げを加速させた銘柄も少なくなかった。

 ただし、そうした事情も踏まえながら、バイオベンチャー関連の投資妙味に着目することは、投資家のテーマ株物色の幅を広げる役割を担う。再生医療分野の市場規模はオリンピック開催年の2020年に1兆円、さらに10年後の2030年には12兆円に膨らむとの試算を経済産業省は示しており、これはバイオ関連株に対し、成長期待を背景とした波状的な物色人気を支える根拠となっていく。

(中村潤一)


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