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【特集】ヘリオス Research Memo(1):iPS細胞を用いた再生医薬品開発のパイオニア


ヘリオス<4593>は、iPS細胞を用いた再生医薬品開発のパイオニア企業で、2015年6月に東証マザーズに上場した。加齢黄斑変性治療薬の開発を進めているほか、早期収益化と技術的なシナジー獲得を目的に、米バイオベンチャーのAthersys, Inc.(以下、アサーシス)とライセンス契約を締結し、アサーシスが開発した脳梗塞治療薬の国内での開発・販売を目指していく。また、横浜市立大学と共同研究している3次元臓器(肝臓)の開発が実現すれば、iPS細胞を用いた再生医療製品の市場が一気に拡大するものとして注目されている。

同社は理化学研究所(以下、理研)からiPS細胞由来のRPE細胞(網膜色素上皮細胞)の作製に関する技術ライセンス導入を行い、他家iPS細胞由来の加齢黄斑変性治療薬の開発を進めている。現在は前臨床試験の段階だが、2017年後半以降に臨床試験を開始し、約3年後の承認申請を目指している。また、海外では2016年内にも開発販売パートナーを決定し、共同開発を進めていく方針となっている。加齢黄斑変性治療薬では理研で自家iPS細胞由来のRPE細胞を用いた臨床研究として、世界で初めて患者へのRPE細胞シートの移植が2014年9月に実施され、現在まで再発はなく視力も安定するなど良好な結果を得られているだけに、期待度も高まっている。

アサーシスの脳梗塞治療薬は発症後36時間以内に投与することで、その後の症状改善に寄与する治療薬を目指している。従来の治療法(血栓溶解療法で発症後4.5時間以内、機械的血栓回収療法で同8時間以内)と比較して治療可能時間が長いことから、上市されれば脳梗塞治療において大きな変革になるものとして期待されている。2016年2月に米国で発表された国際第2相臨床試験の結果によれば、安全性・有効性ともにプラセボ群との明確な有意差が確認されている。同社は条件付き早期承認制度を活用して2016年後半に臨床試験を開始し、2020年頃の上市を目指していく。国内で脳梗塞発症後36時間以内に治療可能な患者数は年間約6.2万人と推計されている。治療薬の薬価が数百万円とすれば少なくとも1,000億円以上の市場規模が見込めることになる。同社はアサーシスに契約一時金15百万ドル及び開発マイルストーン最大30百万ドル、売上高に対するロイヤルティ率10数%を支払う契約となっているが、上市されればこれら費用を十分回収できるとみられる。

2015年12月期(2015年1月?12月)の売上高は前期比64.9%減の98百万円、営業損失は1,060百万円(前期は568百万円の損失)となった。マイルストーン収入200百万円がなくなったことや、研究開発費が増加したことが営業損失の拡大要因となった。また、2016年12月期に関しては海外での契約交渉や国内での脳梗塞治療薬の臨床試験開始など流動的な要素が多いことから、業績予想の開示を行っていない。ただ、当面は研究開発費の負担が先行するため損失が続く見通しで、収益が本格的に成長期に入るのは開発パイプラインの上市が見込まれる2020年以降となる見通しだ。

■Check Point
・3次元臓器の開発に期待
・アサーシスの幹細胞製品MultiStemを使った脳梗塞治療薬の国内での上市を目指す
・眼科手術補助剤の「BBG」は上市済み

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《HN》

 提供:フィスコ

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