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【特集】ケネディクス Research Memo(1):不動産を自ら保有せず、ファンドが保有するモデルで成長拡大目指す


ケネディクス<4321>は、国内最大の独立系不動産アセットマネジメント会社である。1995年の設立以降、日本の不動産証券化ビジネスの勃興期から活躍するとともに、不動産アセットマネジメント会社の草分けとして業容を拡大してきた。J-REIT(リート)の6銘柄や私募REITのほか、多数の私募ファンドを運用しており、受託資産残高は1.6兆円を超える。国内外の機関投資家や年金基金、個人投資家など幅広い投資家層を顧客基盤に持つ。2008年のリーマン・ショックによる金融引締めや不動産市況の悪化の影響を受け、一時は資産圧縮と投資の凍結を余儀なくされたが、その後の好調な不動産マーケットを背景として同社の業績も好調に推移している。バランスシートの再構築が完了したことに加え、自ら不動産を保有せず、グループで組成・運用するファンドが保有することにより、安定的な収益力を追求する「ケネディクスモデル」の本格稼働により、同社は新たな成長ステージに入った。

2015年12月期の業績は、営業収益が前期比0.8%減の25,997百万円、営業利益が同24.2%増の10,119百万円、経常利益が同42.5%増の9,127百万円、当期純利益が同102.4%増の9,807百万円と大幅な増益となった。連結対象不動産の売却が一巡したことで営業収益はわずかに減収となったものの、主力のアセットマネジメント事業が2つのJ-REITの上場を含む受託資産残高の拡大により大きく伸長しており、同社の業績の伸びをけん引している。また、総合的な収益力を示す純利益についても、支払金利の削減に加えて、好調な不動産マーケットを背景とした売却益(特別利益)の積み上げや過去投資案件の処分損(特別損失)の縮小により大きく伸びた。2015年11月には株主還元の一環として、自社株買い約20億円を実施している。

2016年12月期の業績予想について同社は、営業収益を前期比13.1%減の22,600百万円、営業利益を同8.1%減の9,300百万円、経常利益を同10.7%増の10,100百万円、当期純利益を同2.0%増の10,000百万円と見込んでいる。営業利益はこれまで拡大基調であったREIT向けビジネスが巡航速度に落ち着くことから一旦減益となる想定であるが、純利益については、支払金利の削減や過去投資案件の処分損(特別損失)の解消により増益を確保する見通しであり、引き続き好調な決算が持続するものと捉えるのが妥当だろう。

同社は、2017年12月期を最終年度とする中期経営計画を進めている。安定的な収益基盤であるノンアセット事業をコア領域として再定義するとともに、アセットマネジメント事業を中心とする安定収益の成長、共同投資を中心とする不動産投資事業の推進、財務の健全性と株主還元の最適なバランスの追求の3項目を重点施策とし、最終年度のベース利益※4,000百万円、3年平均ROE8.0%を目標に掲げている。

※ベース利益とはアセットメネジメント事業及び不動産関連事業の営業総利益から販売費及び一般管理費を控除したものである。同社の安定した収益力を示す指標となっている

弊社では、中長期的な視点から、ヘルスケア分野やインフラ分野等、市場拡大の期待できる対象資産への取り組みや不動産関連サービスの拡大、海外展開など、今後の成長に向けた動きに注目している。特に、潤沢なキャッシュポジションの使い道(資金アロケーション)についてもフォローしていきたい。

■Check Point
・様々なアセットクラスの7つのREITを運用、豊富なラインアップが強み
・2015年12月期は大幅な増益、期初予想に対しても大きく上回る利益で着地
・2017年12月期にベース利益40億円、3年平均ROE8%を目標とする

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)

《HN》

 提供:フィスコ

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