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【経済】NYの視点:ECB、政策で困難に直面


経済協力開発機構(OECD)は、1月の複合先行指標でメンバー34国全ての経済の鈍化が示されたと報告した。また、国際通貨基金(IMF)のリプトン筆頭副専務理事はワシントンで行われた全米企業エコノミスト協会(NABE)会合での講演で、「変動の激しい金融市場、商品価格の下落が世界経済の健全性に新たなリスクを加えた」とし、「成長を強化しリスクに対応するためには金融や財政政策、構造改革で総合的な措置をとる必要がある」と主張した。

欧州中央銀行(ECB)は1月の定例理事会で政策の据え置きを決定したものの、「3月の会合で金融政策の見直しや再検証を行う」と追加緩和を示唆した。ドラギ総裁も先週、欧州連合(EU)議員に宛てた返答書簡の中で、「ユーロ圏のインフレが引き続き予想を下回る」とし、「新興諸国経済に関する不透明感が上昇する中、見通しの下方リスクが上昇しているため、政策の見直しが必要となる」と説明している。手段としては、1)預金金利の引き下げ、2)見通しの修正、3)現行で月600億ユーロとしている量的緩和(QE)の規模拡大、または、他の措置の導入が予想されている。量的緩和(QE)では、規模拡大だけでなく、「預金金利以下の利回りの債券購入を回避する」という現行の規制を取り除く可能性も指摘されている。また、資産購入プログラムにおいて12月のように、資産の種類を拡大させる可能性もある。4)条件付き長期リファイナンスオペ(TLTRO)の条件緩和、あるいは拡大も可能。

現行マイナス0.3%の預金金利を10ベーシスポイント引き下げマイナス0.4%に設定することを市場はほぼ100%織り込んだ。中央銀行は同時に銀行セクターへの打撃を和らげるべく、2段階に分ける政策が導入される可能性も指摘されている。さらに、ECBメンバーは、年初からの原油価格の一段の下落、中国や新興諸国市場の混乱の影響で域内のインフレや経済に見通しを下方修正する可能性がある。量的緩和(QE)の規模拡大の可能性に関しては、メンバーの反対も多く、当初の確率は5分5分だった。しかし、現時点では7割ほど織り込みつつある。

そんな中発表されたドイツの1月鉱工業生産は前月比3.3%増と、予想0.5%増を上回り3ヶ月ぶりの増加となった。また、増加率は2009年9月来で最大を記録。さらに、ユーロ圏の10-12月期国内総生産(GDP)改定値も前年比で1.6%増と、予想外に速報値1.5%増から上方修正された。良好なドイツの鉱工業生産やユーロ圏GDPの結果は欧州中央銀行(ECB)の政策判断をより困難にさせる。ECBの対応が期待はずれとなるとユーロのショートカバーに拍車がかかることになる。

《NO》

 提供:フィスコ

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