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【経済】なぜ日本株は炭鉱のカナリアなのか


先週の日本株の暴落は世界の主要な株式市場のなかでも突出していた。日経平均株価はわずか4営業日で-11.1%、代表的な新興市場のマザーズ指数に至っては-15.6%も下落した。
 信用不安が取りざたされたドイツ銀行のあるドイツの株式指数DAXは先週1周間で-3.4%、FRBが利上げ先送りを示唆し景気減速懸念が高まった米国のダウ指数も同-1.4%の下げにすぎなかったのと対照的だ。
 日本の株式・企業は欧州の信用不安などからは最も遠いはずなのになぜ世界で最も売られるのだろうか。企業業績も現時点ではそれほど大きく落ち込んでいるわけではない。
 答えは日本株が世界の景気敏感株と位置づけられているからである。景気敏感株との位置づけのため、世界景気の先行きに懸念が生じると真っ先にとにかく売られる。リーマン・ショックの時も最も関係ないと言われた日本株が最も大きく売り込まれたのは記憶に新しい。外国人の売買代金が市場の約7割りを占めていることと、アジアで最も流動性が高く売りやすいという点も大きい。規制の面でも比較的自由になったため、例えば中国その他のアジア国々のヘッジとして日本の株式や先物が売られる。またこの場合、逆に日本「円」はなぜか安全資産とされていることから、最強の通貨となり円高に大きく振れ、これが輸出企業の業績の下押し圧力となる。
 そこで、世界景気に懸念が生じると、このメカニズムが発動し、売りが売りを呼んで日本株が大きく下落するという事態が発生しやすいということになる。日本株は世界経済のなかではいわば炭鉱のカナリア(有毒ガスの発生を最初に検知する弱い鳥の意味)役割を担って(担わされて)いるのである。
 今回の日本株の暴落は、中国減速懸念に加えて欧州信用懸念、米国の利上げ先送り観測(=景気減速懸念)という毒ガスによって、炭鉱のカナリアである日本株が最もダメージを受けたということができる。
 確かに、日銀の利下げも銀行株等の収益に懸念を生じさせたが、それだけではこれほど暴落する要因にはならない。それは真の理由ではなく、日銀に責任があるわけではない。また、アベノミクスは終わったとの声も聞かれるが、アベノミクス云々の問題でもない(第三の矢が放たれる必要はあるが)。
 今回の暴落は上記の海外要因(懸念)にある以上、日本株が上昇に転じるためには、これらの懸念に対して問題の各国が協調して適切な対応がとられることが必要となる。もし、適切な対応が取られれば、懸念によって大きく下落した分について、最も大きくリバウンドするということになろう。
《YU》

 提供:フィスコ

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