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【経済】人民元に弱気スタンス、中国の外貨準備不十分=米有力ヘッジファンド


有力ヘッジファンド、米ヘイマン・キャピタルの創業者カイル・バス氏は11日、人民元相場に対して弱気な見方を示した。ヘイマン・キャピタルは昨年6月から香港ドルや人民元をはじめとするアジア通貨を空売り。空売りの規模は10億米ドルに上り、ポートフォリオの約85%を占めるに至っている。バス氏は香港経済日報の取材に対し、「今回が初めての香港ドルと人民元の空売り」とコメント。ただ、空売りを開始して以降の投資パフォーマンスには言及しなかった。

<中国の外貨準備は不十分>


バス氏が空売りを進める背景には、「中国経済がハードランディングのリスクを抱えている」との判断がある。中国当局は最近の空売り勢力に対して、「中国は3兆2000億米ドルの外貨準備を有し、対抗できる力がある」と強気のスタンスを示しているが、バス氏はこれに反論。国家開発銀行など政策銀行の備蓄を除外した場合、「中国の実際の外貨準備は2兆2000億米ドル程度にとどまる」と説明。「外貨準備は不足している」と明言した。

<銀行の資産膨張にもリスク>


バス氏はまた、中国の銀行資産が「収拾のつかない」ほどに膨張している点にも懸念を表明している。中国銀行業監督管理委員会の公式統計によると、国内金融機関の資産は過去10年で420%増加し、約194兆人民元に拡大。これに対してバス氏は、「銀行の資産は2006年の3兆米ドルから、足元では34兆米ドル(約223兆人民元)に膨らんだ」と指摘。「仮に銀行システムが資産の10%を失えば、損失額は約3兆5000億米ドルにも上る」とし、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融危機の際に米国の銀行を救済した当時の経験を参考にすると、「中国人民銀行(中央銀行)は10兆米ドル以上の紙幣を増刷して銀行に注入しなければならず、これが人民元相場の大きな下落圧力になる」との見方を示した。
その上でバス氏は、今後18カ月で人民元の対米ドルレートが約30%下落すると予想。「政府が人民元の下落ペースを制御したいのであれば、まず10~15%下落させるだろう」とし、「最終的に外貨準備を消耗するだけ」と分析している。

<香港ドル空売り、人民元とのペッグ予想で>


また、人民元とともに香港ドルも空売りしているのは、人民元が30%下落すれば、香港の銀行システムも影響を受けると予想しているためだ。「1年後には米ドルとのペッグ制を維持するだけの“弾薬”が底をつく恐れがある。その場合、米ドルとのペッグ制が維持できなくなり、人民元とペッグすることになる」と予想した。


【亜州IR】

《ZN》

 提供:フィスコ

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