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【特集】リプロセル Research Memo(4):欧米各2社買収による技術、研究、営業でのシナジー効果を期待


■会社概要

(3)グループ会社の概要とシナジーについて

2014年以降、欧米各2社のバイオベンチャーのグループ化を進めてきた。これら海外子会社のグループ化によって、グローバルでの販売体制、及び研究ネットワーク体制が構築され、また事業ポートフォリオについてもヒトiPS細胞の研究試薬から細胞作製、及び培養技術ノウハウ、ヒト細胞の調達ネットワークや前臨床試験サービスに至るまで、リプロセル<4978>が今後、再生医療分野へ進出するうえで必要となる事業基盤を一通り揃えたことになる。各子会社の特徴やシナジーについては以下のとおり。

○Reinnervate(英国)
Reinnervateは英国の細胞生物学の研究拠点であるダーラム大学からスピンアウトして2002年に設立された大学発ベンチャー企業で、同大学細胞工学教授ステファン・シボルスキー氏による3次元細胞培養の研究成果を技術基盤としている。細胞培養は今までシャーレやフラスコなどの容器内で、2次元の状態で培養されることが一般的であったが、2次元では細胞形状も平坦なものとなってしまい高品質な臓器細胞を作製するには適していない。このため、最近は様々な企業で3次元細胞培養技術の開発が進められている。同社が開発した技術は、特殊な培養用プレート「Alvetex」を用いることによって、従来の容器をそのまま使うことができるほか、安全かつ高品質な細胞を培養できることが特徴となっており、国際宇宙ステーションで実施された骨の成長に関する研究でも採用されるなど、世界的にも高く評価されている技術となっている。同技術をヒトiPS細胞の培養に活用することで、より高品質なヒトiPS細胞由来の臓器細胞の開発が今後、期待されている。

まだ開発ステージの会社ではあるが、今後はグループ会社の研究試薬などの販売を行っていくことで、事業規模を拡大していく方針となっている。

○BioServe(米国)
BioServeは、米国立衛生研究所(NIH)やその一部門である国立がん研究所(NCI)に在籍した分子生物学者Rama Modali氏を中心とした研究者によって1989年に設立した会社である。医療機関から調達した60万個以上のヒトDNA、組織、血清サンプルをバンキングし、大手製薬、バイオテクノロジー企業、診断サービス企業や主要大学・医療機関などにこれら生体試料を提供している。また、遺伝子マーカーの特定や創薬研究関連の受託サービスなども行っている。

同社を子会社化した目的は、米国における販路拡大と製品ラインナップの拡充、並びに技術シナジーを図ることにある。従来は調達が困難であったアルツハイマー病やパーキンソン病等の疾患患者の細胞をBioServeから調達し、疾患iPSモデル細胞を作製するといったことが可能となり、ヒトiPS細胞の製品ラインナップ拡充により、多様なニーズに対応できるようになった。

○Stemgent(米国)
ヒトiPS細胞の製品ラインナップ拡大と米国での事業展開強化を目的に、StemgentのiPS細胞事業部門を米国の子会社(ReproCELL USA, Inc.)が譲り受け、その後、同子会社の商号をStemgentに変更した格好となっている。StemgentはヒトiPS細胞向けの研究試薬の製造販売を行っており、米ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学などの主要大学と研究ネットワークを持つほか、その他の大学や研究機関、大手企業を中心に約200の顧客を持つなど、ヒトiPS細胞の研究試薬では高い実績とブランド力を有している。Stemgentの子会社化により、ヒトiPS細胞の確保から初期化、分化誘導に至る全ての技術プロセスで使用する研究試薬のラインナップが大幅に拡充されたことになる。

○Biopta(英国)
Bioptaはヒト組織を用いた創薬支援サービスを大手製薬企業向け中心に提供している会社で、創業は2002年となる。米国に子会社を展開している。欧米の医療機関とのネットワークを活かして、鮮度の高いヒト組織・臓器を調達し、前臨床試験業務の受託サービスを行っている。GLP※に準拠した設備・体制を整備し、高い技術力と運用ノウハウを持っていることが強みとなる。また、顧客も世界のメガファーマ売上高上位10社中8社と取引実績を持つなど、大手製薬企業を中心に50社以上と取引があり、子会社化による営業面でのシナジー効果は大きいとみられる。

※GLP(Good Laboratory Practice)・・・検査・治験の信頼性を担保するうえで樽種すべきガイドラインで、臨床試験を行う際には規制当局より認定を得る必要がある。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《HN》

 提供:フィスコ

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