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【特集】アキテクツSJ Research Memo(7):家づくりの流れを変えたASJアカデミー(5)


■会社概要

○本部一括仕入れと最新積算システム「COSNAVI」の融合でコスト競争力を強化
成約率向上のために必要なことは、ボリュームゾーンの価格帯の顧客を満足させる提案を可能にすることだ。地方の建設会社や工務店における戸建て住宅の建設コストに占める主要な項目は、建材費と労務費である。建設業界は人手不足という状況から、必然的に建材の仕入コストの削減が解決策となる。

建材仕入コストの大幅な削減は、アーキテクツ・スタジオ・ジャパン<6085>が建材の一次代理店となることで実現する。住宅設備・建材メーカーとしては、少子高齢化と人口減少で国内市場の縮小が見込まれるなか、成長ポテンシャルの高い同社と取引することにやぶさかでない。業界では前例ができれば、多くのメーカーが追随することになる。同社の仕入れ価格は、個々の建設会社や工務店が自前で仕入れる水準よりも低く抑えられている。同社が一般的な卸売のマージンを乗せても、加盟建設会社への仕入コストの削減効果は大きい。

同社のねらいは、坪80万円まで高騰してしまった建築コストを坪60万円まで引き下げることだ。ボリュームゾーンの顧客の大半は、延べ床面積が約40坪の建屋を希望している。建設コストが坪60万円に下がれば住宅単価は2,500万円に収まり、金額で見送っていた顧客を呼び戻すことができる。

同社の「PACKAGE 2015」で取り扱う住宅設備機器及び建材は、建築家が許容する品目に限定している。カバーするものの主体は、値段が張る住宅設備機器やコスト削減効果の大きい床材、内装材、外装材、屋根材などの建材である。ボリュームゾーンの住宅で扱える素材は限定されるものの、建築家ごとにデザイン・コンセプトが異なるうえ、顧客(施主)の希望を具現化することから、一品的な注文住宅を提案できる余地は十分ある。また建築家にとっては、顧客に設計が気に入ってもらえても、最後の積算で予算オーバーのコストクラッシュが発生し、失注するリスクが抑えられる。

加盟建設会社が顧客と商談を進めるうえで負担となっているのが、見積もり・積算業務の繰り返しである。同社が提供する積算ソフトウェア「COSNAVI」の利用により、積算に要する時間は従来の手計算による2~3週間から1~2時間に短縮された。さらに、「PACKAGE 2015」と「COSNAVI template」を融合させたシステムでは積算時間が1~2分に縮まり、大幅なスピードアップになる。本部では、加盟店による新システムの利用を促すため、大規模な研修を行う予定だ。

顧客にとっては、予算の許す範囲で自分の希望を具現化できるというメリットが大きい。まず、「PACKAGE 2015」に用意された「和テイスト」「カジュアル」など15のパターンから好みのものを選び、それをベースに設計することになる。それらのパターンで建てられた住宅の過去の積算情報がデータベース化されており、間取りや大きさなどを入力すると、新システムは顧客の目の前で直ちに積算作業を終了する。「PACKAGE 2015」に登録されている住宅設備や建材を選べば、“お得価格”の見積もりになり、予算内に収まるかどうかのシミュレーションが速やかにできる。

所要時間が極めて短いため、建設会社は顧客とパソコンの画面を見ながら、建築コストの積算作業を繰り返し行える。積算は、使用する部材の単価と数量から構成されるため、見積もりの見える化が実現でき、顧客からの信頼を得やすくなる。最後の建築家との打ち合わせでのコストクラッシュによる契約不成立も回避できることになるため、工事会社だけでなく建築家にとってもありがたいシステムだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)

《HN》

 提供:フィスコ

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