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【経済】中国:鉄鋼業界の負債総額53.5兆円、設備稼働率70%未満に低迷


これまでの過剰投資が裏目に出る形で、中国の鉄鋼業界が深刻な不況に喘いでいる。
需給バランスの悪化と、それに伴う市況低迷が響く。指標の鋼材総合価格指数は、過
去5年で6割も下落した。しかしまだ底値は見えていない。鉄鋼業界の不況は、今後も
持続する可能性が濃厚という。証券時報などが20日付で伝えた。
鉄鋼業界の抱える負債の総額は、足元で3兆人民元(約53兆5000億円)の大台を突
破。各社平均の負債比率は70%まで悪化した。上場企業のなかでも、すでに八一鋼鉄
(600581/SH)は、上場鉄鋼企業34社のうち唯一、負債比率が100%を超えている。新
彊ウイグル自治区を本拠とする同社は、沿海部などの需要地と離れている点を指摘。
同業他社よりも輸送コストが多くかかるため、厳しい経営環境が続いていると経営不
振の理由を釈明した。2015年9月末の時点で、上場鉄鋼34社の負債比率は平均64%。
うち八一鋼鉄を含めた17社が70%を超過した。
ただ、大手企業が経営破たんに陥る例は極めて少ない。雇用や税収などの各面
で、地元政府に貢献しているためだ。赤字体質のいわゆる“ゾンビ企業”にも補助金
を与えることで、生産活動を続行させている。34社に対する年間の政府補助額は、12
年が36億2000万人民元、13年が22億8000万人民元、14年が37億7000万人民元に達し
た。15年に関しても、すでに1~9月累計だけで23億2000万人民元が支給されている。
上場鉄鋼企業の資金はひっ迫傾向にある。合算の買掛金は、10年が1200億人民
元、11年が1353億人民元、12年が1564億人民元、13年が2048億人民元、14年が2105億
人民元、2015年9月が2052億人民元に膨らんだ。
中国鋼鉄工業協会の集計によると、大中型鋼鉄企業の1~10月損失額は、全体で
386億人民元。主要業務損失に限ると、720億人民元(約1兆2800億円)に膨らんだ。
集計対象となった101社のうち、48社(47.5%)が損失を計上した。平均販売利潤率
はマイナス1.5%となっている。
こうしたなかでも、過剰生産能力の解消は進んでいないのが実情。中国全体の粗
鋼年産能力は11億5000万トンに上るのに対し、生産量は8億トンにとどまる。設備稼
働率も70%未満と低い。専門家によると、能力2億トン相当を廃棄・淘汰すること
で、設備稼働率を正常レベルの約80%に改善させることが可能という。
すでに鉄鋼資産を分離する動きも、一部に出てきた。中国港中旅集団は昨年12月7
日、保有する唐山国豊鋼鉄有限公司の権益58.49%、唐山達豊焦化有限公司の権益
35.09%をすべて売却すると予告。近く河北省の国有資産監督管理委員会に譲渡する
と発表した。鉄鋼景気の悪化に対処し、中央企業(中央政府直属の国有企業)で初め
て撤退する。1993年に設立された唐山国豊鋼鉄の年産能力は鉄鋼で850万トン、鋼材
で120万トン。1万4000人の従業員を抱える。唐山達豊焦化は鉄鋼生産時に用いるコー
クスの生産企業。
このほか開源控股、五鉱発展、創興資源が鉄鋼資産の売却を決めている。経営の
効率化が各社の目的だ。うち開源控股の主力業務は現在、香港とパリでのホテル経営
となっている。赤字を流出する不良資産をはく離する狙いだ。

【亜州IR】

《ZN》

 提供:フィスコ

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