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【特集】ベネフィット・ワン Research Memo(1):日本発の「サービスの流通創造」への挑戦


 

ベネフィット・ワン<2412>は、1996年の創業以来、一貫して「サービスの流通創造」を経営ビジョンに事業を展開している。モノを扱うネット通販サイトでは年商が6,000億円に達しようとする規模の企業が出てきたが、サービスマッチングの分野にはガリバー企業が未だ存在しない。同社は、ユーザー課金型マッチングサイトを運営することで、需要側(ユーザー/消費者)とサービス供給側(サプライヤー)の双方にメリットを提供し、マーケットの開拓を進めている。インターネットを利活用するビジネスは、米国生まれが大半だが、同社は日本発のビジネスモデルを打ち出した。

1996年の設立から2005年までの第1ステージでは、ユーザー課金型のサービスマッチングサイトを立ち上げ、有料会員を獲得する手段として、企業や官公庁へ福利厚生アウトソーシングサービスを提供した。会員規模を拡大することで、スケールメリットを追求した。コスト削減とサービスレベルの向上を目的とする福利厚生の外注化が追い風となった。2006年からは、事業の多角化を推進する第2ステージに入った。多角化は、既存の福利厚生事業で培った経営資源を活用する形態をとったことから、比較的短期間で収益化することに成功した。2014年からは第3ステージと位置付け、事業ドメインを「BtoB」と「BtoC」に再定義した。BtoBではBPO(Business Process Outsourcing)事業の推進により市場を深堀りし、BtoCでは定額課金(サブスクリプション)と在庫共有(シェアリング・エコノミー)の2大コンセプトをベースにサービスの流通創造を目指す。

労働力人口の減少と人手不足感の高まりを背景に、企業がコア資源への選択と集中をするためのアウトソーシングニーズは拡大している。BtoB事業では、人事データを活かした、福利厚生、報奨、健康、出張、小口精算、財形持株、給与計算のワンストップソリューションを提供する。金融・健康分野では対象に応じたコンシェルジェサービス等も行い、企業における金融関連・健康関連データのサポートニーズを取り込む構想だ。

BtoC事業では、一般的な「無料」マッチングサイトがサービス供給側(サプライヤー)からの広告・手数料収入で成立しているのに対し、同社は需要側(ユーザー/消費者)からの定額課金(サブスクリプション)により成立しているのが大きな特徴だ。安定的な収益基盤を確保できるほか、広告主に依拠しない公平な視点でのサービス提供が可能となる。また、欧米では、個人が所有する遊休資産の貸出しを仲介するサービスである「シェアリング・エコノミー」に関わる企業が急成長しているが、同社はサプライヤー企業の在庫情報共有によるサービス消費・供給の効率化を「シェアリング・エコノミー」と位置づけており、BtoC事業において、サービス業で十分に有効活用されていない経営リソースの稼働率を高めることに事業機会を見出している。在庫(空き)状況に応じた変動価格システムにより稼働率の平準化を図る商慣行は、航空会社やホテル業では常態化しており、ネットを通しての予約決済が大半を占めるまでになった。同社は、(1)グルメ (2)エンターテインメント(3)ヘルスケアの分野において在庫情報を共有化することで、需給バランスに対応する変動価格システムの普及を図る。オンライン予約、チケットレス、事前決済などの利便性を高める施策も進めており、サービス流通に改革をもたらすことになろう。

2016年3月期は、売上高が前期比33.5%増の28,900百万円、経常利益が同30.1%増の4,350百万円、当期純利益同40.2%増の2,780百万円を見込む。

■Check Point
・人事データ活用によるBPOのワンストップソリューションを提供
・定額課金(サブスクリプション)と在庫共有(シェアリング・エコノミー)を武器に
「サービスの流通創造」を進める
・2016年3月の予想は、前期比33.5%増収、30.1%の経常増益

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)

《HN》

 提供:フィスコ

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