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【特集】アドバネクス Research Memo(6):医療機器向けはセルフケアの進展で使い捨て器具の需要増が見込める


■事業戦略

○医療機器
医療機器向けは、グローバルニッチ企業を目指すアドバネクス<5998>に適した市場になる。世界人口の増加、全世界の医療費支出の増加を背景に、安定的な市場拡大が期待される。市場のトレンドとしては、セルフケアの進展により、使い捨て器具の需要増加が見込める。モデルチェンジが少なく、長いライフサイクルと高収益が商品特性になる。一方、ネガティブ要素としては、開発・試作コスト、長い試験期間、企画中止のリスクが挙げられる。ネガティブ要素が参入障壁の高さになっているため、それらをクリアできれば、安定的かつ高収益を享受できることになる。

その好例が、英国子会社の医療用精密ばね製品である。売上高の4割強を占め、同子会社の高収益に寄与している。1999年に欧州の大手医薬品メーカーから喘息薬の定量噴霧式吸引器に使われる精密ばねを受注したことが飛躍のきっかけとなった。他社製品では基準をクリアできなかったが、新潟工場の開発したばねが合格し、受注に成功した。製造用装置を英国に移送し、量産を開始した。

医療分野では、セルフケア・簡易治療薬の普及が加速している。喘息薬吸引機は、薬を一定量噴射する機能を有し、自分で持ち運んで、処方する使い捨て製品になる。同社は押しばねを供給しており、今後は生産地域を欧州から米国へ展開する。同社の精密ばねを使用したセルフケアキットに、糖尿病患者などが使用する自動注射器がある。患者が自分で使用する注射器から自動で針が突刺し、薬液を注入する。こちらも、持ち運びしやすく、使い捨てである。押しばね、トーションばね、深絞り加工部品が同社製品になる。医薬品メーカーは、生産地域を欧州からアジアへ展開する。同社は、英国での成功例を、日本を始めとする他の地域にも展開する考えだ。

○ロックワン
住設・インフラ分野で期待されているのは、「ボルト・ナットの緩み、脱落防止スプリング『ロックワン』」である。NAS3350(米国宇宙航空規格)に準拠した衝撃型振動試験機を用いた試験に合格するなど突出した性能を持つ。鉄道総研が行った線路のボルト・ナット緩み防止部品の試験結果で、最も良い結果を出した。また、高速道路の遮蔽板や案内板の脱落防止用途も期待できる。高速道路のように振動が多い場所では、ボルト・ナットの緩みが生じやすい。他社製品では、ナットに緩み防止機能を内蔵させているものがあるが、ナットごと替えなければならない。同社の場合は、市販のソケットレンチを使用してナットの上からロックワンを簡単に装着でき、作業も楽で、コストも低くて済む。ユーザーは緩みの点検頻度を少なくできる。住宅設備市場では、新築のマンションのバルコニーのアクリル板等に使用されるナットの緩み止めに用いられている。形状が複雑であることから現在、ロックワンを量産化できるのは同社だけである。

ダブルナット、緩み止めナット、ロックワンを対象に、ボルト・ナットが緩み、脱落する振動回数を測る衝撃型振動試験が行われた。誤差を小さくするため、同製品を2個ずつ、同時にテストしている。脱落する振動回数は、ダブルナットが1200~1800回、緩み止めナットが2500~4500であったのに対し、ロックワンはNAS3350の3万回をクリアした。繰り返し使用を想定した試験では、18万回後でも脱落しなかった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)

《HN》

 提供:フィスコ

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