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【特集】3Dマトリックス Research Memo(3):欧州、アジア、中南米市場での販売展開を進める止血材


■業績動向

(2)主要パイプラインの今後の動向

○吸収性局所止血材(TDM-621)
止血材の動向を地域別に見ると、国内においては臨床試験の再申請に向けた協議をPMDAと継続して行っている状況にある。当初の想定よりも協議が長引いている理由としては、対象領域ごとに止血効果の評価方法をどのように設定するかという点と、統計学上の有意差を得るために必要な症例数などについて、慎重に協議を進めていることが挙げられる。スリー・ディー・マトリックス<7777>では再申請を2016年4月期中に行い、2017年4月期第1四半期の臨床試験開始に向け、PMDAとの協議を継続して行っていくとしている。

欧州、アジア、中南米市場においては2014年1月に欧州で取得したCEマーキングを使った医療製品登録申請などによる販売展開を進めている。欧州では英国、ドイツ、スイス、フランス、スペインでホールセラーを通じた販売が開始されており、今後もイタリアなど対象国を広げていきながら、今期末には70~100ヶ所の医療施設への販売を目指していく。また、独占販売権許諾契約の交渉先に関しては、従来と変わらず欧米3社と同時並行で進めており、当第3四半期末までの契約締結を目指していくことに変わりない。

アジアでは、香港で既に販売を開始しているほか、第3四半期以降には既に医療製品の登録承認済みであるインドネシアにおいて販売パートナーのPT.TeguhsindoLestaritama向けに初期ロット分で数千万円の売上げが見込まれている。また、韓国、オーストラリアでも今期中の製品登録承認が取得できる見通しで、承認取得後に韓国ではデウン、オーストラリアではマッケ向けにそれぞれ販売を開始する予定となっている。規模としては初期ロットで数千万円程度となる見通しだ。なお、韓国のデウンからは承認が下りた段階で、マイルストーン収益も入る予定となっている。

その他にも当第1四半期にASEAN地域(タイ、ベトナム、フィリピン)における販売権許諾契約を締結したデウンがタイでの製品登録申請を行っており、早ければ今期中の登録承認、及び販売開始が見込めるほか、シンガポールやマレーシア、ブルネイでもシンガポールのTransmedic社との間で独占販売権許諾契約を2015年12月に締結しており、早期に販売を開始する予定となっている。

また、中南米では、当第1四半期にコロンビア、第2四半期にブラジルでそれぞれ製品登録承認を取得しており、現在は販売代理店を探索中で、早ければ当第4四半期の販売開始を目指している。また、チリでは販売代理店との契約後に、今後販売を進めていく段階に入っている。メキシコについては、今期中に製品登録承認を得られる見通しで、承認の取得に合わせて販売代理店契約を締結し、下期中の販売開始を予定している。

米国においては、治験開始に向けたFDA(米国食品医薬局)との協議を進めている段階で、2016年4月期中の治験開始を目指している。協議が長引いている背景としては、対象領域が日本と同様に広範なため、プロトコル設定についても各領域で詳細な部分まで評価基準を定めるのに時間が掛かっていること、また、それに合わせて非臨床データ結果なども追加で資料請求されていることなどが挙げられる。

なお、止血材を使用する際に、より利便性を向上するための医療デバイス(内視鏡術用塗布デバイス、腹腔鏡用塗布デバイス、スプレーデバイス)を医療機器メーカーが開発しており、現在は当該企業でCEマーキングの登録申請を行っている(内視鏡術用塗布デバイスは認証取得済み)。認可が下り次第、同社が止血材とセットで販売していく予定となっている。

○粘膜隆起材(TDM-641)
外科的内視鏡手術で用いられる粘膜隆起材に関しては、2014年12月より国内で臨床試験を開始したが有効性をより明確にするための製材改良が必要との判断により、2015年2月に一時中断している。、同社では当第3四半期までに製材の改良を終え、臨床試験の再開を目指している。また、同社は国内での臨床試験のデータ結果をもって欧州でのCEマーキング取得も進めていく予定となっている。

○歯槽骨再建材(TDM-711)
米国での上市を目指している歯槽骨再建材に関しては、当第1四半期より開始した第2段階目の臨床試験の登録患者数が10月末時点で10名と予定の半分を超え、順調に進んでいる。経過観察期間が約半年程度となっていることから、今のペースでいけば2016年秋頃には臨床試験が終了する見込みで、試験結果が良好であればFDAに製造販売承認申請を行う予定となっている。販売パートナーとの契約は製造販売承認の段階からになると見られる。

○創傷治癒材(TDM-511)
創傷治癒材に関しては、2015年2月に米国のFDAより市販前届(510k)の承認を取得し、販売の許認可を得ている。同社では他の薬剤とのコンビネーション(抗生物質、抗がん剤、ヒアルロン酸等との混合投与)による治療効果の増大により、製品としての付加価値向上が期待できることから、今後はコンビネーション材として開発を進めていくことを基本方針としている。ただ、単材としても商品化の引き合いがあることから、今後事業化に向けた検討も進めていくとしている。

○siRNA核酸医薬用DDS(TDM-812)
国立がん研究センターとの共同プロジェクト「RPN2標的核酸医薬によるトリプルネガティブ乳がん治療」における医師主導型の臨床第1相試験が2015年6月より開始されている。同治験では「がん幹細胞」に特異的に発現するPRN2遺伝子をターゲットとし、その発現を抑制する核酸医薬と、同社の自己組織化ペプチドA6K(TDM-812)をキャリアとするDDSを組み合わせた製剤の安全性評価を行っている。症例数は30症例を目標に、経過観察を含めて臨床試験を行う予定となっている。

乳がんにおける核酸医薬での臨床試験は国内でも初の取り組みとなり、試験結果が良好であれば企業主導型の臨床試験への移行、及び大手製薬企業へのライセンスアウトの可能性も出てくるだけに、今後の動向が注目される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《SF》

 提供:フィスコ

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