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2015年12月29日19時00分

【市況】矢口 新のマーケット羅針盤 「現地に行ったからといって、それだけで、分かるものではない」


●「生の声」が「真実」とは限らない

 海外視察に行った人が、現地からの生の声などと報告することがある。日本にいるだけだと、そうかそうかと、耳を傾けたくなるものだ。耳を傾けるのはいい。しかし、それを「真実」だと思い込むと、世の中を1つの眼鏡を通して見てしまうことになる。

 私は野村證券のニューヨークにいた時に、日本の機関投資家、全金融機関相手のリレーション担当のような仕事をしていたことがあった。時には、生保や信託銀行(年金など)のファンドマネージャーたちを引き連れて、野村主催の現地企業訪問をすることがあった。

 プロクター&ギャンブルやバドワイザー、ロッキードやグラマン、薬品会社などの超大手企業でも、日本の機関投資家に株式を買って貰いたいために、役員、時には社長自らが社内を案内してくれ、プレゼンテーションを行い、ランチや土産までくれる。私が参加したものだけで、訪問が合計で20数社。ニューヨークのホテルでの会社説明会が100社近くあったと思う。

 それで何が分かるか? 企業の言いたいことだけが分かる。

 例えば皆さんでも、自分が住んでいる町の、どの位のことを把握しているだろうか? 勤めている会社のどれだけのことを分かっているだろうか? 東芝では社員のほとんどが会社の実情を知らなかったのだ。

●相場で最も信頼できる情報は「値動き」

 相場で最も信頼性が高い情報は値動き、次いで売買高だ。売買高は場外での取引があるので、値動きよりも少し落ちる。場外での取引では、市場でつかない値段がつく可能性があるものの、チャートなどへの記録や評価、他の人の損益には関係がないものなので、市場参加者が気にする必要がない。つまり、相場での情報は誰でもが入手できるものほど信頼性が高いのだ。

 世界の動きや、マクロ経済の状況も、公的機関発表の数値や報告の方が、メディアや現地からの報告よりも信頼性が高い。

 聞き耳を立てるのはいい。しかし、判断するのは自分自身だ。雰囲気とか、空気とかの表現は、あくまで、その人が(先入観や他人の意見を参考に)そう感じただけなのだ。

 良いお年を!


矢口 新(やぐち あらた)
アストリー&ピアス、野村證券、グリニッジ・キャピタル・マーケッツ、ソロモン・ブラザーズ、スイス・ユニオン銀行などで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスを勤める。2002年5月株式会社ディーラーズ・ウェブ創業。2013年4月まで同社代表取締役社長。JTI(Japan Trading Intelligence)初代(2003-7年)代表。

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