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【特集】ユニリタ Research Memo(5):マイナンバー関連、IoT、セキュリティ等のソリューションにも着手


 


■成長戦略とその進捗

ユニリタ<3800>は、今期(2016年3月期)から「第2次中期経営計画」をスタートした。企業のIT部門に求められる役割が企業価値向上へ直接貢献するところへシフトしていくなかで、新たな成長分野への積極投資や人材シフト、古い技術から新しい技術への入れ替え、社内インキュベーションによる事業育成やM&Aの活用などより、最終年度である2018年3月期には売上高100億円(平均成長率12.8%)、経常利益24億円(経常利益率24.0%)、ROE14.0%を目指す内容となっている。

メインフレーム事業が縮小傾向をたどるなかで、オープン系の製品販売が同社の成長をけん引する計画となっている。また、「新規・成長事業」の売上高構成比を現在の20%から48%にまで拡大する想定である。

「第2次中期経営計画」の基本方針と上期実績は以下のとおりである。

(1)パッケージソフトウェアメーカーとしての製品開発力並びにサービス力の強化

得意分野である生産性向上製品群ETL※1、BI※2、ITSM※3において新バージョンや新製品を投入し、下期以降の展開に向けた準備を行うとともに、同社とビーコンITに分散していたサポート機能を統合、カスタマーサービス部を設置しサポートサービスと技術支援の品質強化に取り組んだ。また、メインフレーム系基幹システム運用からクラウドコンピューティングの活用に取り組む企業までを対象として、顧客のノンコア業務のソーシング化事業の強化や、グループとしてのサービス提供体制の更なる強化のために子会社3社(アスペックス、ビーティス、データ総研)の完全子会社化を行った。
※1 ETL…企業の基幹系システムなどに蓄積されたデータを抽出し、利用しやすい形に加工し、対象となるデータベースに書き出すこと
※2 BI…業務システムなどから蓄積される企業内の膨大なデータを、蓄積・分析・加工して、企業の意思決定に活用しようとする手法
※3 ITSM…企業のニーズに合致した適切なITサービスを運用および継続的改善していくための仕組み

(2)顧客の経営課題解決に必要とされるITスキルの強化

技術の入れ替えのための先行投資として、市場拡大が期待される事業領域となる「モバイル」「ビッグデータアナリティクス」「クラウド」、「セキュリティ」の新規・成長事業部門に、既存事業から20%相当の60名を重点配置した。また、新規投資分野を統括する新ビジネス本部を設置するとともに、マイナンバー関連、IoT、セキュリティ等のテーマに関するソリューションの準備に着手した。

(3)新・企業文化創り

ユニリタ文化創造プロジェクトを立ち上げ、社員の意識改革と合併組織のネックとなりがちな社員間及び組織間のコミュニケーション問題の改善を図った。

ただ、営業面において役割と機能別に編成した新体制の運用が計画どおりの成果を出し切れなかったこと、データ活用事業において新製品等の市場投入が遅れたこと、新規・成長事業分野の立ち上げがスロースタートになったこと、「組織一体化とプロセス統合」をテーマとした合併組織統合施策の第1フェーズに一部進捗の遅れがあったことなどが計画に対して未達要因となった。同社は、これらの課題への対応を早期に行うことで、下期での巻き返しを図るとともに、中期経営計画の達成に向けて成長スピードを高めていく構えである。特に、若干もたつきのあった営業体制については、「お客様・製品ポートフォリオ」に基づく営業アプローチをベースとして再編成を行った。具体的には、顧客を既存と新規、製品を既存と新規に区分し、それぞれを掛け合わせた4つのセグメンテーションに分けることで、効率的な資源配分とそれぞれに効果的なアプローチを仕掛ける体制とした。また、インサイドセールス(メールなどの非対面方式によるアプローチ)、フロントセールス(対面方式によるアプローチ)、プリセールス(セミナーやイベント等)の効果的な連携にも取り組む。

弊社では、依然としてメインフレーム事業に依存した収益構造が続いているものの、将来(3~5年先)を見据えた事業構造変革を進めていく方針には妥当性があると評価している。さらに言えば、現在の収益源が機能しているうちに、次の収益モデルを構築するスピードが要求されるとみている。もっとも、メインフレーム事業も市場は縮小しているものの、残存者利益の享受によりしばらくは収益源となり続ける可能性もあるが、そこは業績の上振れ要因としてみておくほうが安全であろう。

今後の課題は、いかに市場平均を上回る成長率を実現していくかにある。そのためには、新規・成長領域の強化は欠かせないテーマである。足元では、若干の出遅れ感があるものの、組織融合や人材育成(シフト)を早期に進めることにより、新規・成長領域における製品開発と既存事業とのシナジー創出がポイントとなるとみている。また、潤沢な手元資金を今後の成長にどのように振り向けていくのかもカギを握ることになるであろう。効果的なM&Aを含め、子会社戦略等にみられる事業構造変革に向けたスピードや精度を高めるための仕組みづくり(権限委譲やインセンティブ、マインドセットなど)に対する経営手腕にも期待したい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)

《RT》

 提供:フィスコ

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