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【経済】「アキュセラ・インク」 窪田良CEOに聞きました! <直撃Q&A>

窪田 良 アキュセラCEO

「失明撲滅に意欲燃やす」
―「加齢黄斑変性」飲み薬の開発進む―

 世界で約1億3000万人の患者がいるといわれる眼疾患の「加齢黄斑変性」。欧米では50歳以上の失明の原因の第1位であるこの病気に対して、世界初の飲み薬の開発を進めているのが、東証マザーズ(外国株)上場のバイオベンチャー企業、「Acucela Inc.( アキュセラ・インク <4589> )」だ。米シアトルに本社を置き、新薬開発を進める同社の会長・社長兼CEOで眼科医の窪田良氏に同薬の開発状況について聞いた。


■治療薬のないドライ型に挑戦
 来年央にトップライン・データを発表

――加齢黄斑変性の治療薬である「エミクススタト」の開発状況を教えてください

 「2005年から探索を始め、現在、米国で臨床2b/3相試験が行われている。これまでのところ、安全性に関わる問題は報告されておらず非常に順調だ」

 「加齢黄斑変性にはドライ型とウエット型がある。その9割を占めるドライ型にはいま治療薬がない状態。ウエット型には目への注射による薬があるが、眼科専門医が注射しなければいけないし、患者への負担が大きく液体であるため保存も難しい。我々が開発している『エミクススタト』は、ドライ型の加齢黄斑変性に対する内服薬。錠剤の飲み薬だから、輸送も保存もしやすいし、開発途上国などでも非常に使いやすい。将来的にはウエット型への適応も視野に入れている。エミクススタトは、米国の米医薬品食品局(FDA)の優先審査対象品目(ファスト・トラック)にも指定されている」

――米国での臨床2b/3相試験とは、どの程度の段階なのですか

 「臨床試験のフェーズ2以上というのは患者に薬を飲んでもらっている状態。プラセボ(偽薬)以外に3つの複数容量群による容量設定試験を兼ねているので2bという名前がついているが、エミクススタトは実質的に大規模臨床試験であるフェーズ3の段階にある。エミクススタトは2年間、患者に飲んでもらい対象となる75%の患者への投与が終わっている。来年6月頃にトップライン・データの結果が発表される予定だ」

 「この発表でおおよそのことが分かる。通常なら2本目の試験を求められることが多いが、例えば低用量群でも統計的な有効性が顕著に認められて、安全性も顕著に良好であれば、さらなる試験は行わずにこのデータをもとにFDAに新薬承認の申請をすることもあり得る。もし、2本目以上の試験を実施することになっても、今回の結果が良ければ有効性を確認するのに必要な期間が2年ではなく1年になる可能性もあると考えている」

――来年のトップライン・データの発表が非常に重要となる

 「一般的に新薬承認を申請した場合、FDAは6ヵ月から1年で薬として認可するか判断する。ファスト・トラックに指定されている薬の場合、6ヵ月程度で認められることが多い。また、眼科領域は一番ブレークスルー・セラピー(画期的新薬)が出ている分野であり、エミクススタトが、そうなることを信じている。2005年に探索を開始し10年がたつが、フィニッシュラインに近づいてきていると感じている」

 「加齢黄斑変性の飲み薬を開発することで、日本のプレゼンスを高めていきたいと考えている。日本人が率いるチームで世界から失明を撲滅することを目指したいと思う」

■市場規模は兆円単位
 パイプライン拡大も実施

――エミクススタトの想定される市場規模は。また、今後の事業計画を教えてください

 「加齢黄斑変性の治療薬の市場規模はウエット型で1兆円前後。我々が開発を進めているドライ型は、対象となる患者数ははるかに多い。また飲み薬での開発を進めていることもあり、ウエット型に比べても非常に大きい市場が広がっている」

 「今後エミクススタトの適応症を加齢黄斑変性だけではなく、『糖尿病性網膜症』や『糖尿病性黄斑浮腫』への拡大も進める計画だ。これらの糖尿病関連への拡大は来年には臨床試験を始めるべく努力している。糖尿病性網膜症は糖尿病の患者の約半数に発症が認められるので、この適応症の拡大だけでも新たに1億人前後の患者が対象となるだろう。また、エミクススタト以外の化合物の開発も進めパイプラインの幅を広げる予定だ。さらに、医療IT関連の事業も手掛けたいと考えている」


●窪田良(くぼた りょう)氏
 眼科医。アキュセラ・インク会長兼社長兼CEO。1966年兵庫県出身。91年慶応義塾大学医学部卒業。96年虎の門病院勤務。2000年米ワシントン大学医学部シニアフェロー、01年同大学助教授。02年シアトルでアキュセラ・インクを設立。慶應義塾大学医学部客員教授。

●アキュセラ・インク
 2002年創業のバイオベンチャー企業。14年2月に東証マザーズに外国企業による上場を果たした。大塚製薬と共同開発契約を結び、SBIグループが大株主となっている。眼科領域に特化し、テクノロジーの開発、新薬開発から販売までを手掛ける垂直統合型の眼科医療分野のソリューション企業を目指している。

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