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【経済】一尾仁司の「虎視眈々」:過剰供給体制の是正に関心


〇供給過剰是正の動きを注視

続落基調で始まった昨日のNYダウは4日ぶりに上昇した。軽いフシ目と見られる17500ドルを回復したに過ぎないが、燃料安効果の航空株(パリ同時テロで売り込まれた反動)、16年の設備投資24%削減を発表した石油大手シェブロン株の1.9%上昇が目を惹いた。原油価格は続落し、相場全体の重石になっているが、売り方の買戻し、中長期投資家の安値拾いの動きが交錯する。来年相場の見通し、米利上げペース(来週の利上げは大勢としても、その後の利上げペースの見方は分かれる)などにエネルギー・資源価格の動向が大きく影響する。

10日発表のOPEC(石油輸出国機構)月報で、11月のOPEC原油生産は日量23.1万バレル増の3169.5万バレル、約3年ぶりの高水準となった。来年の需要見通し日量3080万バレル(据え置き)を90万バレル近く上回る。4日の総会で生産上限を撤廃、「加盟国は望むだけ生産できる」(イラン石油相)状態。勝手な予測だが、来年の非OPEC加盟国の生産は日量38万バレル(従来は13万バレル)減少するとの見方で、市場シェア維持作戦の効果が出ると見ている。

14年末から始まった資源安は止まっておらず、物価見通しを大きく狂わせている。10日発表の11月米輸入物価指数は前月比0.4%下落(市場予想の0.7%下落は下回ったが、前年同月比では9.4%下落)、ドル高と相まってディス・インフレ感を強めている。輸出物価指数は前月比0.6%下落(前年同月比6.3%下落)。

また、ラフな数字で、世界の石油関連株の時価総額は1兆ドル以上失われ、10年以降に発行されたエネルギー・鉱山企業の社債2兆ドルが焦げ付き始めている。雇用改善、賃金上昇から物価上昇は2%の目標に近付くとの前提で、利上げが行われる見通しだが、果たして、利上げする環境なのか、との懐疑的な見方が燻る。この綱引きは原油安が反転しない限り続きそうだ。

資源デフレに中国の影響が連日のように報道されているが、9日は記録的な石油製品輸出が伝えられた。年央から増加ピッチを強め、11月は初の400万トン乗せ、1?11月累計で3183万トン、前年同期比18.6%増に達した。推定換算で日量76万バレル強に該当する。中国の原油輸入は11月日量665万バレルだが、1割以上が製品輸出に回り、アジアの燃料価格引き下げ圧力に転化していると見られる。今のところ、是正のメドは立っていない。

素材ばかりに目が向きがちだが、8日には中国の「O2O」(オンライン・ツー・オフライン、オンラインのモバイルユーザーをオフラインの実店舗やサービスに誘導するビジネス。タクシー配車、グループ割引など多様なサービスがある)バブル崩壊が伝えられた。3月に従業員2000名以上を抱えていた新興企業「社区001」が事実上破綻した様が伝えられた。これら未公開企業でベンチャー・キャピタルなどから積極的な資金調達を行った企業を「ユニコーン企業」(評価額10億ドル以上で21社ある)と呼ぶそうだが、破綻あるいは大手ネット会社に吸収されているようだ。

案外、過剰体制の是正として過剰部分の破綻ラッシュを待っているのかも知れない。

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(12/11号)

《FA》

 提供:フィスコ

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