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【特集】品川リフラ Research Memo(1):鉄鋼業界の事業環境が悪化するも、底堅い動き


品川リフラクトリーズ<5351>は、創業140年の日本を代表する耐火物メーカーで、世界でも五指に入る。鉄鋼を始め、非鉄金属、電力、ガス、セメント、ガラス、窯業など日本の基幹産業に、各種の耐火物や窯炉、装置を提供している。

2016年3月期の第2四半期の業績は、売上高が48,567百万円、前期比1.3%減、経常利益が2,235百万円、同15.7%減、当期純利益が1,392百万円、同13.6%減の減収減益であった。期初予想比では、売上高が3.1%減、経常利益が6.9%減となった。最大の需要先である鉄鋼業界は、国内需要の減速に伴う在庫調整の遅れ、海外市況の低迷を受け、同期間の粗鋼生産が前年同期比6.3%減少した。同社売上高の約4分の3を占める耐火物及び関連製品事業は、粗鋼生産量減少の影響を受け、売上高が前年同期比0.1%増、セグメント利益が同10.0%減少した。

2016年3月期通期の業績予想は、上期実績を踏まえて見直された。今回の予想は、売上高が100,000百万円、前期比0.2%減、営業利益が4,800百万円、同2.0%減となった。期初予想比では売上高が1.7%減、経常利益が7.7%減となる。今下期の粗鋼生産量は、上期比微増が計画されており、同社の下期予想は前年同期並み、今上期比では増収増益の予想になっている。

中国の鉄鋼業界は、冬の時代に入った。同国の粗鋼生産量は、2014年に世界シェアが50%を超える規模に拡大した。過剰設備を抱えているところに、内需が減退し、数量減少と販売価格下落のダブルパンチを受けている。主要企業である宝山鋼鉄や馬鞍山鋼は、2015年7月?9月期に売上高が前年同期比2ケタの落ち込みより営業損失に陥った。販売数量確保のため輸出ドライブがかかっており、2015年の中国からの鉄鋼輸出は1億トン超と日本の粗鋼生産量に匹敵する規模が予想される。2015年1月?6月期の中国製鉄鋼製品の平均輸出価格は、前年同期比2割以上も低下しており、輸出先にも市況悪化が広がっている。これの状況を反映して、日本の鉄鋼会社も第2四半期決算発表時に2015年度下期の経常利益予想を大幅に下方修正した。

足元の業績が厳しいものの、日本の鉄鋼会社は積極的な設備投資計画を維持する意向だ。古い設備のままでは、中国等の海外メーカーに対し競争優位性を維持できなくなる恐れがあるためだ。JFEスチール(株)は、現中期経営計画(2015~2017年度)における国内設備投資額を前中期経営計画と比べ35%増の650,000百万円としている。一方、新日鐵住金<5401>は、国内製造拠点が将来にわたり製鉄事業のマザーミルの役割が果たせるよう、2017年度までの3ヶ年の国内設備投資額を約1,350,000百万円、年間450,000百万円程度とし、前中期経営計画比で年間100,000百万円程度(29%増)上積みする。

鉄鋼の国内需要は、企業収益の好転、国土強靭化計画、オリンピック・パラリンピック需要により堅調に推移することが予想される。鉄鋼会社は、海外では自動車のグローバル調達に対応し、中長期的にはインドやASEANなど新興国の社会インフラ整備や省エネルギー、環境対応のニーズを取り込むことを企図している。同社も、高付加価値の戦略品種に注力する一方、輸出及び海外子会社の管理・支援機能を強化している。

■Check Point
・鉄鋼大手2社は、今中期経営計画の国内設備投資を前中期経営計画比約3割増に
・鉄鋼業界の事業環境が悪化するも、同社の業績は底堅い
・高付加価値の戦略5品種増産のために積極投資

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)

《HN》

 提供:フィスコ

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