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【特集】ヒマラヤ Research Memo(5):原価率は改善傾向が続く、適時適量仕入やプロパー販売力の強化で更なる改善も


■同業他社比較

スポーツ用品小売で同業大手のゼビオホールディングス<8281>、アルペン<3028>との直近の経営数値の比較をまとめてみた。

まず、既存店売上高の前年同月比伸び率推移を見ると、2015年7月以降は消費税増税の影響も一巡し、3社とも前年同月比95~108%のレンジで推移している。9月は長雨の影響で、ヒマラヤ<7514>の売上高は96.9%と前年割れとなったものの、10月は前年を上回り売上は好調のようだ。

収益性について比較すると、売上原価率については3社の中でヒマラヤが相対的に高い水準となっている。これは売上規模の違い(大手2社の売上高は2,000億円超と同社の3倍弱の水準)によるメーカーとの価格交渉力の差や、PB商品の売上構成比が低い(他2社は20~30%程度)ことなどが要因として挙げられる。ただ、前述したように適時適量仕入やプロパー販売力の強化といった取り組みによって、同社の原価率は4四半期連続で改善傾向となるなど、その差は縮小傾向にある。同社では今後もこうした施策を継続していくほか、PB商品の売上構成比率を将来的には20%程度まで高めていくことで、原価率の更なる改善が進むとみられる。

在庫回転数を見ると、新規出店用の在庫積み増しなどで期によってバラつきはあるものの相対的にヒマラヤの回転数が高くなっており、在庫コントロールが適切に機能していることがうかがえる。一方、アルペンに関しては回転数がここ数期間、低水準のままで推移していたが、2015年4月?6月期において在庫処分を実施したことで、ほか2社並みの水準まで改善している。

一方、販管費率に関しては各社ともほぼ同様のトレンドで推移している。2014年後半以降は、消費増税の影響による売上の伸び悩みにより、各社とも人件費を中心に販管費率は上昇傾向にあったが、2015年4月?6月期は売上高が回復したことで、大手2社は前年同期比で改善している。一方、同社は直近四半期まで4四半期連続で若干ながら上昇傾向が続いている。前述したように、B&Dによる販促費の一時費用計上や、物流拠点の新設などが主因となっている。ただ、今後も販管費率に関しては現状水準並みで推移する見通しだ。プロパー販売力の強化や「接客力」を向上するための社員の教育・研修費用、店舗内設備に対する投資に注力することで他社との差別化を図り、競争力を高めていく方針のためだ。なお、同社の販管費率が第1四半期(9月?11月期)に高くなる傾向となっているが、これは新規出店が同四半期に集中することによる一時費用の増加が要因となっている。

2011年度以降の営業利益率で見ると、ヒマラヤは3~4%の水準で安定して推移する一方で、アルペン、ゼビオの収益性が低下傾向となり、2014年度では3社の中で初めてトップに立った。利益率の水準は低いものの、同社の収益性向上に向けた施策が、着実に成果を挙げつつあるものとして評価されよう。消費増税の影響がなくなる2015年度は大手3社ともに収益性の改善を見込んでいるが、同社では現在の経営施策を実行していくことで、今後も着実に収益性向上を図り、2018年8月期には4%程度の水準を目標としている。

一方、財務状況に関しては、大手2社の自己資本比率が50%以上で推移しているのに対して、同社は30%台となっており、財務体質面ではやや開きがある。これは有利子負債依存率が20%台と大手2社(2014年度末実績でゼビオ0.4%、アルペン11.6%)に対して高い水準となっていることが影響している。ただし、上場企業の中で見れば自己資本比率が極端に見劣りするわけではなく、さらに有利子負債依存率の水準も事業規模の拡大とともに、若干ながら低下傾向となってきている。また、株主資本効率の観点で見れば、ROEではここ数年、大手2社が低下傾向となっているのに対して、ヒマラヤは8%前後の水準と最も高い水準を維持しており、大手2社よりも資本効率の高い経営ができているものとして評価されよう。

なお、中期経営計画における新規出店ペースは年間10店舗以上で展開していく予定となっており、出店経費に関しては期間損益で十分賄える見通しとなっている。このため、今後M&Aなど大きな資金需要が発生しない限り、有利子負債の水準としては現状レベル、もしくは改善が進むものと予想される。

主な株価指標を見ると、今期予想PERに関してはアルペン、ゼビオが20倍台となっているのに対して同社は10倍弱の水準となっており、また、東証1部上場企業平均(約16倍)に対しても下回るなど相対的に割安な水準にあると言える。

当面は9月に低調だった月次売上高が10月以降どの程度回復するかが注目されるが、収益性向上に向けた取り組みと新規出店効果により、収益の拡大基調が続くことを考慮すれば、株価に関してはなお評価余地があると思われる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《HN》

 提供:フィスコ

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