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【経済】今夜の10月米雇用統計発表を睨んで「ドル・円の行方」


~サンワード貿易(株)ストラテジスト 松永英嗣~


10月2日に発表された9月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が市場予想平均の20.1万人増に対して14.2万人増となり、前月の17.3万人増を大幅に下回りました。9月の米雇用統計が大幅に悪化した原因は、チャイナ・ショックによる米国株の大暴落が主な要因と思われます。

8月のNYダウは、月初から2334ドルも暴落する場面がありました。そして、9月になっても1万6000ドル台前半付近で低迷を続けたことで、米国企業の求人数が大幅に低下したと思われます。

それが「9月の米雇用統計」を大幅に悪化させた可能性が高そうです。

しかし、10月のNYダウは、安値から2000ドルほど急上昇したことを受けて、米国企業の求人数が増加したことも考えられ、求人数が9月に大幅減少した反動も加わって今週末に発表される10月の米雇用統計が予想以上に改善する可能性もあります。それにより米国の利上げ観測が更に高まることになれば、「FRBによる12月の利上げ観測」が高まり、「ドル高&円安」の流れが鮮明となり、ドル円が来週にも1ドル=123円台に突入する可能性もあるのではないでしょうか。

ドル円は、CFTCから10月23日に発表されたIMM日本円におけるファンドなど大口投資家のポジションが「3639枚の売り越し」となり、今年最低の売り越し枚数を記録しました。その翌週発表(10月10日の発表)では、大口投資家のポジションが「3万272枚の売り越し」まで増加し、ファンドが再び売り越し枚数の増加に動き始めました。IMM日本円における大口投資家による売り越し枚数は、今年になって7000枚を割り込んだことが今回で3回目となります。4月28日に5493枚の売り越し枚数にまで減少した時は、その後1ヶ月間でドル円が119円付近から5.5円ほど円安に進みました。また、9月8日に売り越し枚数が6662枚まで減少した時は、その後半月間程度でドル円が118円付近から2.5円ほど円安に進みました。一方、売り越し枚数が10万~11万枚まで増加したことが今年になって2回ありますが、その後は急激な円高進行となりました。そうしたファンドポジションの変化からも、10月20日に売り越し枚数が今年最低枚数を記録した直後からドル円がじりじりと円安進行を始めたことから、しばらく円安進行が続くものと思われます。そして、現在の売り越し枚数が10万枚に近づけば、円安に対する警戒を高める必要もあるのかもしれませんが、そうなるにはまだ時間がかかりそうです。

ドルインデックスにおけるファンドなど大口投資家のよる買い越し枚数が10月20日に今年最低となる2万8203枚を記録しました。その翌週(10月27日)の発表では、買い越し枚数が3万4691枚に増加し、ファンドが買い越し枚数の積み増しに動き出したようです。大口投資家の買い越し枚数が今年最低を記録した直後なだけに、ここで今週末の米雇用統計発表が良好な内容となれば、米利上げ観測の高まりを背景としてファンドがしばらくドル買いポジションを増加させ続けることも考えられることから、来月に向けて1ドル=125円付近を目指すことも考えられます。

IMM日本円におけるファンドの売り越し枚数と、ドルインデックスにおけるファンドの買い越し枚数が共に今年最低を記録した直後であり、それに10月の米国株大幅高の影響を受けて米雇用統計が改善する可能性があるのであれば、「ドル高&円安基調」の恩恵を受ける取引に注目するべきところかもしれません。また、11月4日の上海総合株価指数が大幅高となって先月高値を更新すると共に8月26日の安値から21%強の上昇となる強気相場入りとなったことから、マーケット全体でリスクオンの流れが強まり、8~9月のチャイナ・ショックによる「リスクヘッジの日本円買い」の流れの反動が強まることも十分考えられます。

情報提供元: サンワード貿易(株)

《TT》

 提供:フィスコ

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