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【特集】訪日ニーズ新潮流「医療ツーリズム」 <株探トップ特集>


―訪日客“おもてなし”次の一手―

 訪日外国人観光客の拡大が続くなか、医療関連企業でも、これに対応した動きが急務となっている。外国人が旅行先で体調不良となった場合、受け入れ国では外国語に精通した医師やスタッフの対応が不可欠になるが、日本の場合、多くの医療機関ではこれが遅れているのが現実だ。高度な医療技術への海外からの評価は高く、治療目的で外国人旅行者を受け入れるメディカルツーリズムを普及させる動きも始まっており、関連企業の取り組みが注目される。

●治療目的の訪日ニーズも

 最近の訪日外国人観光客の急増に伴い、医療現場では外国語での対応が可能なスタッフの確保が急務になっている。また、単なる観光ではなく、治療目的で日本へ旅行するメディカルツーリズムへのニーズも高まっており、これに関連するサービスの充実も必要だ。

 メディカルツーリズムは、自国の高額な医療費や医療技術に不満を持つ人が治療目的で高度な医療技術が完備された国に渡航すること。アジア地域ではシンガポールが、2000年に国策としてメディカルツーリズムの推進を開始。世界有数のバイオメディカル研究機関や医薬品などの研究機関を誘致し、国主導の5カ年計画は前倒しで達成している。また、タイでも02年から国策として海外からの患者誘致を積極化させている。

 このようにアジア周辺国でメディカルツーリズムの整備が国家規模で進むなか、日本でも11年1月から「医療滞在ビザ」の運用を開始している。アジアの富裕層などを対象とした健診、治療などの医療および関連サービスを観光と連携して促進していくことが目的だ。

●阪急阪神などは国際外来対応の医療モール

 この運用が開始から数年経過し、訪日外国人観光客が増加の一途を辿るなかで、外国語に堪能な医師やスタッフの育成、外国語対応の医療モールの新設などの動きがここへきて加速している。今後、20年の東京五輪開催へ向けても医療面での訪日外国人対応の強化は不可欠であり、関連ビジネスの取り組みが注目されている。

 阪急阪神 <9042> 傘下の阪神電気鉄道は、キリン堂HD <3194> が資本参加しているソシオン ヘルスケア マネージメントと共同で、医療と美容を提供する都市型クリニックモール「インターナショナル・メディカルスクエア」を、大阪・西梅田のハービスPLAZAに10月1日オープンした。シンガポールの国際的医療機関であるラッフルズ・メディカル・グループが支援するクリニックが同モール内に開業。英語、中国語でコミュニケーションを図ることができる医師や国際外来に精通した経験豊かなスタッフを配置し、増加する外国人の旅行者や駐在員のニーズに対応している。

●南海電鉄、狙いは富裕層

 南海電 <9044> は、19年春の完成を目指して建て替えが進められている南海会館ビル(大阪市中央区)でメディカルセンターを開業予定。先進医療や予防医療を行う専門外来センターと健診センターを誘致し、関西空港から訪れる海外富裕層をターゲットに医療ツーリズムのハブ化を目指す。

●翻訳センター、ニチイ学館も攻勢

 翻訳センター <2483> [JQ]は、エムスリー <2413> と医療情報の翻訳サービスで提携。エムスリーが「m3.com」上で展開している医師の生活に役立つ情報「QOL君」サービスを通じて医学論文翻訳サービスなどを提供している。国内で従事する医師にとって、海外で発信される最新ニュースなどの入手が不可欠となっており、翻訳を通じて医師の国際化をサポートする。

 ニチイ学館 <9792> は、「ニチイのWebカレッジ」で外国人来院者の対応に必要な英会話を習得できる講座を開設している。医療従事者が、外国人患者との応対で必要な英会話や現場の実情に即したコミュニケーションのコツなどが学習できる。

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