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【特集】カイオム Research Memo(4):ヒト化抗体LIV-1205でスイス企業とオプションライセンス契約締結


■業績動向

(1) 2015年12月期第2四半期累計業績の概要

8月14日付で発表された2015年12月期第2四半期累計(2015年1月?6月)の連結業績は、売上高が前年同期比17.1%減の133百万円、営業損失が722百万円(前年同期は581百万円の損失)となった。創薬アライアンス事業の減収により売上高が減少したことに加えて、研究開発費や人件費の増加により、営業損失が拡大した。ただ、ナノ医療イノベーションセンター(iCONM)内に予定していた新研究所の開設を中止したことや、その他経費の圧縮により、期初会社計画に対しては損失額が縮小している。

新研究所の開設を中止した理由は、iCONM施設の貸主側の意思決定の遅れや、施設の施工・運用ルール等の未整備状況が明らかとなり、当初想定していた開発スケジュールの見直しが避けられない情勢となったため。カイオム・バイオサイエンス<4583>では開発遅延を避けるため、旧リブテックの研究所を再稼働することを決定した。旧研究所では機能を拡張し、名称も抗体創薬研究所(神奈川県川崎市)として開発活動を行っている。開発体制としては、本社内にある抗体技術研究所にて抗体作製を行い、抗体創薬研究所にて抗体創薬から動物モデルによる薬効試験までを行うことになる。機能的には予定していた新研究所と同レベルでの開発が行える体制を整備している。

当第2四半期累計期間においては、完全ヒトADLib(R)システムの検証契約締結に向けた営業活動を行い、国内外の複数の製薬企業から既存の抗体作製技術にはないユニークな特徴が評価されたものの、同社が望む条件での導出に向けて、更なる抗体作製実績の獲得が必要となっている。このため、現在は主としてPOCが確立しているターゲット対する抗体作製を行い、抗体作製実績の蓄積を行っている。

一方、トピックスとしては2015年5月に旧子会社のリブテック(2015年7月に吸収合併)が開発したがん幹細胞を標的とした治療用ヒト化抗体である「LIV-1205」に関して、スイスのADC Therapeutics社(以下、ADCT社)とAntibody DrugConjugate(ADC:抗体薬物複合体)※での全世界における独占的開発・販売権に関するオプションライセンス契約を締結したことが挙げられる。
※ADC(抗体薬物複合体)は抗体と薬物を結合させ、抗体の抗原特異性を利用して薬物を疾患部位に効率的に行き届かせることを目的とした抗体薬のこと。次世代のがん治療法としても注目されている技術である。

「LIV-1205」は肝臓がんを中心とする固形がんの細胞表面に発現する抗原(標的分子)「Dlk-1」に結合し、がんの増殖活性を阻害するヒト化モノクローナル抗体であり、同抗体単体で動物モデルの単独投与試験で顕著な腫瘍成長阻害効果が確認されている。ADCT社は同抗体を自社のADC技術によって、さらに治療効果の高いADC抗体薬にしていくことを狙っている。

今回はオプション契約のため契約金は事業上のインパクトは大きくないが、有効性があると判断された場合は、本契約に移行していくものとみられる。また、抗体開発が順調に進んで医薬品として販売承認まで進めば、総額で約90億円を受け取る契約となっており、販売後も一定のロイヤルティ収入を得られることになる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《SF》

 提供:フィスコ

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