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2015年10月23日19時04分

【経済】一尾仁司の「虎視眈々」:欧州“冬の時代”へ備え


〇12月追加緩和示唆、買い方に追い風

ECBは予想通り政策を据え置いたが、会合終了後の記者会見でドラギ総裁が12月3日の会合での追加緩和策を示唆する発言を行った。このところ買い姿勢を見せ始めていた市場の追い風(手仕舞いの遅れた空売り勢の買戻しを含め)となり、戻り相場が加速した。

もっとも、ドラギ総裁はIMF総会開催時の9日、「必要なら手段を駆使、資産購入も調整することが可能」と発言していた。この時は「(中国当局者の年率6%超の成長は可能との説明に対し)安心した」とし、「多数の困難が世界の成長に影響する中でも、ユーロ圏経済には耐久性がある兆候が幾つか見られる」と述べ、直ちに追加緩和に動くとは受け止められなかった。今週初の19日時点で、仏クレディ・アグリコルは「ECBはユーロ高を牽制し、反転させようとすると思う。新たな緩和策は発表しないだろうが、おそらく量的緩和策の延長に向けて地ならしを行うだろう」との見方を出していた。内容的にはサプライズではないが、タイミングが嵌った印象が強い。

“冬の時代”とは欧州政治につけられた冠で、ギリシャ、ウクライナ、さらに大量難民問題、VW不正事件など数多くの問題が続く中、各国政府が弱体化し、政権内分裂も噴出する状況を指す。極右勢力台頭や離脱論を強めている。つれて、経済改革の実行は一段と難しさを増し、危機に見舞われた通貨同盟の改革・強化策についても、意見は四分五裂状態。6月に欧州連合が示した「今後2年間で(国民投票が必要な)EU条約改正には手を加えずに、ユーロ圏の銀行同盟を強化し、資本、エネルギー、デジタル市場の統合を進め、経済競争力を育成して、マクロ経済の不均衡に対処する」方針も目立った進展はない。

先週、ドイツからルーマニアにかけ一部で早くも暴風雪となった。本当に寒い冬になるリスクがある。8月に米NOAA(海洋大気局)とNASA(航空宇宙局)が「史上最強のエルニーニョ」と「少なくとも普通の冬ではない」との警告を出した。このところ日本の気候は平穏でその懸念は忘れ去られているが、大洪水や大干ばつ、デング熱流行など、世界経済波乱のリスクがある。とりわけ、欧州は(世界の海水温が上昇するなかで)メキシコ湾流が弱まり、北大西洋に異常低温域が生じていることから大寒波到来が警告されている。そのハシリとも受け取られれる寒波が大量難民を襲っている様が映像で配信されている。

1ユーロ=1ドルのパリティ説が出た頃に比べれば、ユーロ相場は崩れた分けではないが、VW事件などで揺れるドイツ経済や輸出産業を考慮すると、ある程度のユーロ安状況が望ましいと考えているのであろう。経済安定が確保できなければ、”冬の時代”は一層深刻化する公算がある。新局面に至るかどうか、ユーロ相場がカギになると考えられる。

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(10/23号)

《FA》

 提供:フィスコ

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