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【特集】シンワアート Research Memo(9):資本力を駆使したプラットフォームを構築しオークション事業を拡大


■成長戦略とその進捗

シンワアートオークション<2437>は2014年5月期より新中期経営計画(5ヶ年計画)をスタートした。成長戦略の柱は、オークション事業の拡大と新規事業による安定収益源の確保、アジア戦略の3つである。最終年度である2018年5月期には売上高14,500百万円、本体純資産15,000百万円、戦略子会社純資産15,000百万円と大きな飛躍を目指している。

(1)オークション事業の拡大

同社は、長期間にわたるデフレ経済の下で停滞してきたオークション市場の回復、ひいては本来あるべき市場規模に再評価されることを目標に、「日本近代美術再生プロジェクト」と銘打ち、資本力を駆使した大きなプラットフォームを構築することでオークション事業の拡大に取り組む方針である。具体的には、同社がマーケットメイク機能※を果たすことで市場に厚みを持たせ、取引の活性化と市場の拡大に結び付ける戦略である。加えて、自ら取引の当事者となることは、富裕層とのネットワークを構築するうえでもプラスの効果が働くと考えている。同社は、日本の美術品オークション市場は最低でも1,000億円~2,000億円の規模が適正な水準と考えており、その市場規模を支えるためには、最低10,000百万円以上の純資産を確保し、安心できるプラットフォームの運用を目標としなければならないとしている。
※マーケットメイク機能…同社が、当事者として取引に参加することで市場の流動性や効率性を高める手法。

2015年5月期はおおむね堅調に推移したものの、アベノミクスの中だるみから、落札平均価格は前期比ほぼ横ばいにとどまり、注力する商品在庫の積み増しについても出物が少なく大きな進展は見られなかった。ただ、美術品価格の緩やかな上昇傾向や引き合いの動きなどから市場全体に回復への兆しが見えており、こちらは着実に「日本近代美術再生プロジェクト」を進めていく方針としている。

(2)新規事業による安定収益源の確保

同社は、これまでの富裕層マーケティングとのシナジー効果が期待できるとともに、安定的な収入源となり得る分野として、再生可能エネルギー関連事業と医療機関向け支援事業に参入した。

再生可能エネルギー関連事業は、節税効果及び安定的な収益を期待できる投資案件として投資ニーズが拡大するなかで、積極的に太陽光発電施設の開発及び販売に取り組んだことにより、2015年5月期には本格的な業績貢献を実現した。2016年5月期も引き続き事業拡大が見込まれている。また、グリーン投資減税による太陽光発電施設の販売の一巡や2016 年の電力完全自由化に向け、市場拡大が見込まれる電力卸売事業にも参入を決定し、その第一歩として日本ロジテック協同組合が行う電力共同購買事業※の一部を引き受け、電力需給に必要な電力を調達し、日本ロジテックに供給する契約を締結した。本格的な業績貢献にはまだ時間を要するものとみられるが、今後はPPS(新電力会社)として同社グループの安定収益源となるべく事業展開していく方針のようである。
※電力共同購買事業(エコサブ)とは、各需要家の異なる電力需要を取りまとめることによって需要全体の負荷率を改善し、電力の一括購入と実量にあった電力調達によりコストを抑制することで、電気料金の削減するシステムのことである。

また、医療機関向け支援事業は、既存の診療報酬ファクタリングについては一旦凍結としたが、今後はホスピタルネットワークを活かした医療ツーリズムへ注力する方針である。2015年5月期は事業モデルの確立や体制構築に取り組み、2016年5月期から本格的なマーケティングを開始する予定である。

(3)アジア戦略

アジア戦略は、ASIAN ART AUCTION ALLIANCEとの連携強化により、アジア圏でのプレゼンスを高めることである。特に、アジアの富裕層を日本のオークション市場に呼び込むことや、オークション以外にも医療ツーリズム等による事業拡大を目論む。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)

《HN》

 提供:フィスコ

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