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【特集】桂畑誠治【米国株】秋の相場観特集_03 /FRBは利上げ開始後も慎重姿勢堅持

桂畑誠治氏
第一生命経済研究所 主任エコノミスト 桂畑誠治氏

 米国主要株価指数は、8月の世界同時株安で急落し、水準を切り下げた。米金融政策の見方の変化を受け、上下に変動している。9月の雇用の増加ペースが予想を下回ったことで、利上げが来年に先送りされるとの期待が強まり、米株は上昇している。足もとでは第3四半期(7~9月)の決算発表シーズンを迎えており、株価を支える要因となろう。最新の第3四半期業績予想は、原油価格下落、ドル高、新興国経済鈍化によって、4.4%減益まで下方修正され、株価も織り込んでいるが、実績はこの直前予想を上回ることが多いためだ。

 一方、金融政策関連では、12月のFOMCまでには、10、11月の雇用統計など多くの経済指標が公表されるほか、雇用の拡大ペース鈍化は想定の範囲内であること、雇用の質の改善が続いていることから、米連邦準備制度理事会(FRB)関係者は講演などで年内利上げの可能性を指摘し続けるだろう。中国経済減速の影響を受け米国の輸出は伸び悩む一方で、雇用・所得の拡大、ガソリン価格の下落、借り入れ環境の改善等を背景に、ホリデーシーズン商戦を含む個人消費や、住宅投資など国内需要は堅調さを維持すると予想される。このため、中国など新興国経済の成長率が減速しても、米国は今後も緩やかな経済成長を持続できるとの認識が強まろう。

 また、デフォルト・政府機関の閉鎖につながりかねない債務上限の引き上げや12月11日以降の予算策定の遅れなどにより、先行き不透明感を強める可能性があるものの、16年に大統領・議会選挙を控え、与野党は国民の支持を失うことを回避するために、大統領選挙までの債務上限停止と予算合意が行われると見込まれる。

 このような環境のもと、12月利上げの見方が強まることで、米株の上値は重くなろう。ただし、米国の緩やかな経済成長に加えて、インフレ率がマイナスの需給ギャップの残存、ドル高などを背景に低位安定を続けると予想されるなか、FRBは利上げ開始後も、リスクコントロールを重視した非常に慎重な政策スタンスの継続を強調するとみられ、米国株は年末にかけて水準を切り上げると見込まれる。
 NYダウは、下値の目処が1万5370.33ドル。一方、上値目標が1万8351.36ドル、S&P500は、1867.01が下値目処、2134.72が上値目標。

<プロフィール>

第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。

編集企画:株経通信(株式会社みんかぶ)   【秋の相場観】特集より

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