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2015年10月07日16時48分

【特集】MDV Research Memo(4):広範囲な診療情報をリアルタイムで集積する「エースビジョン」


■ソフトウェアプロダクツとサービスの詳細な内容

各種システムの提供を通じて医療・健康データを蓄積する「データネットワークサービス」と、蓄積したデータを活用する「データ利活用サービス」に大きく分かれている。データネットワークサービスではベンチマーク分析等による経営改善、データ利活用サービスは医療現場の詳細なデータを根拠とした事業活動支援を可能にする。

以下に、主要システム並びにサービスを紹介する。

・データネットワークサービス
「EVE」や「Medical Code」などのソフトウェア販売とその後のメンテナンスサービスは、納入時にイニシャル、その後はランニングの収益を生む。

○DPC分析ベンチマークシステム「EVE」
出来高請求とDPC請求の差額分析、患者数・在院日数・医療資源などの各種指標を疾患別・症例別に分析するDPC分析ベンチマークシステム。他院との比較ができるベンチマーク機能で、自院の強みと弱みを把握した上での診療及び経営方針の立案が可能だ。圧倒的なベンチマークデータ量、容易なデータの可視化、優れた操作性により誰もが利用できるという特長を持つ。導入費用は、イニシャルコストが400万円、メンテナンス費用は月額5万円である。2015年6月時点の累計導入数は、741病院。

○DPC詳細分析ベンチマークシステム「EVE-ASP」
自院の名称を実名公開すると、他院の実名で公開された診療内容を閲覧することができるサービス。自院の気になる症例を検索し、パス画面一覧を表示すると、「EVE-ASP」を導入している全病院の収益因子や、詳細な診療情報を閲覧できる。「EVE-ASP」の月額利用料は、2万円。

○病院向け経営支援システム「Medical Code」
DPCフォーマットの入院外来EFや電子レセプトデータなどの標準フォーマットデータを活用し、院内に埋もれている様々な経営課題の解決を支援するシステム。院内での情報共有、意識改革・行動誘発を促し、経営改善の手法まで提示するため、経営改善行動サイクルを誘発し効果的な経営改善が可能になる。現状に即した機能増殖型パッケージソフト。イニシャルコストが800万円、メンテナンス費用は月額10万円である。2015年6月における導入数は、143病院。

○デジタル健康ソリューション「エースビジョン」
2015年5月にリリースされた「エースビジョン」は、患者が生涯にわたり自分自身の診療情報を管理・閲覧することを目的とした病院向けトータルソリューションで、診療記録モジュール、医療情報統合IDカード「CADA」、診療情報保管・閲覧サービス「カルテコ」を付帯する。サービス対象者である患者から各種許諾を得て、メディカル・データ・ビジョン<3902>は提供される診察録データをデータベースに蓄積する。患者は、受診の際に病院から共通診察券機能付きIDカード「CADA」を受け取る。「CADA」は、CADA対応の医療機関で使用できる共通診療券であるため、複数の医療機関で生じる同一患者の診療情報を統合する機能を有する。患者は、Webサービスの「カルテコ」でアカウントを取り、「CADA」に記録されたIDなどを登録することで、「カルテコ」のマイページ上で自身の診療情報を閲覧することが可能になる。

「カルテコ」で閲覧できる項目は、医療機関情報、症状リスト、傷病名、検査結果(数値を含む)、診療中に使われた薬(投薬)、処置・手術、処方された薬、医師のメッセージ(患者からのメッセージ記入も可能)、個人記録用メモである。患者は、症状リストのチェックボックスにチェックを入れるだけで、病院に行く前の症状を記録として残せる。診察情報は、医師の判断により一部の共有にとどまることがある。本サービスの狙いは、患者が「カルテコ」を通して診察記録を自ら管理することにより、治療への積極的な参加や、自身の健康状態や病気に関する理解を進めることにある。

同社が本サービス導入前に行った「カルテ開示に関する意識調査」(1,000人対象)によると、「自分のカルテを自分で確認したいですか?」という問いに、「そう思う」と「ややそう思う」と回答をした人の割合は合わせて66%、「自分自身で、過去の通院履歴や病歴、服薬履歴などを保存しておきたいですか?」では61%が肯定的な回答をした。また、回答者の約8割が、年老いた親、子供、配偶者などの家族の健康状態を知っておきたいと答えている。

エースビジョンは、今期中に3システムの稼働を計画している。既に九州と甲信越地区の病院での導入が完了した。今秋に、東北地方の病院への導入が予定されている。3つの病院の規模は、100床未満、約150床、300床超に分かれており、様々なデータの収集に適する。ある病院では、新規外来患者数が23%増加した。診療情報を患者と共有することで信頼を得られ、患者が集まるというエビデンスになる。

「エースビジョン」の導入テンポは、2015年12月期が3病院、2016年12月期が6病院、2017年12月期が24病院を計画している。3年目になると診療データ規模は34万~35万人に達し、統計上意味ある母数になると想定している。DPCデータは、急性期入院医療に限定され、データ収集も診療してから2ヶ月後になるのに対し、カルテ情報はすべての診療情報が網羅され、リアルタイムでの入手が可能になる。DPCデータにカルテ情報が加わることで、データベースの価値が高まり、データ利活用サービスの用途や対象者が広がることになろう。

将来的には、344の2次医療圏(2015年7月末)に1病院の割合で導入することを目指す。2次医療圏は、特殊な医療を除く、入院治療を主体とした一般の需要に対応するための設定区域になる。ちなみに、1次診療圏は、地位保険法に則る、住民の日常生活に身近な医療・保険サービスを行うための市町村単位の区域を指す。3次医療圏は、1次・2次では困難な特殊な医療需要に対応する、より広域なサービスを提供する区域となる。2次及び3次医療圏は、医療法が定めている。

○医師専門転職サイト「メディリア」
2015年6月に医師専用転職サイト「メディリア」をオープンした。同サイトは、勤務地、病床数、報酬などの基本情報だけでなく、同社が独自に保有する大規模診療データベースや募集病院のDPCデータを活用して、来院患者の性年代、疾患毎の患者数や手術実績をはじめとする診療実績などの情報も提供する。応募する医師が、自分の経験、知識、技能を活かすのに適切なポジションかを判断する材料になる。市場にはニーズがあったものの、これまで患者特性や診療実績に関する情報を提供できる人材紹介サービス会社がなかった。厚生労働者が2004年に「新臨床研修医制度」を導入して以来、大学医局へ入局するのではなく、自ら情報を集めて勤務先病院を選択する医師が増加している。病院側も、ニーズに沿った、ミスマッチのない採用が期待できる。9月末時点で約200の案件が掲載されている。

・データ利活用サービス
EBM Providerサービスを利用した製薬会社は、累計60社を数える。また、2015年からは処方医薬品だけでなく、OTC医薬品の領域を対象とした分析サービスも開始している。

○診療データ分析ツール「MDV analyzer」
顧客自身が患者数や処方日数、処方量などを分析するためのWebツール。疾患や薬剤だけでなく、手術や検査など実際の診療行為を起点とした多角的な分析が可能。年間利用料は、2,000万円。2014期12月期の利用社数は10社。

2015年3月からは、疫学調査支援を目的とした分析システム「MDV analyzer for Academia」の提供を開始している。

○アドホック調査サービス
顧客の様々な要望に応じて、より具体的でピンポイントな分析を同社で行うサービス。詳細な集計レポートやデータセットなどを提供する。「MDV analyzer」を利用した顧客から、より詳細なデータ分析を依頼されることも多い。調査内容は、処方継続率状況、薬剤の新規継続切替え状況などの詳細な分析が可能である。平均単価は400万円。分析の工数と難易度などにより、1,000万円を超えるケースもある。

○OTC・H&BC関連の各種サービス
2015年2月よりOTC・H&BC関連の各種サービスを開始した。従来のデータ利活用サービスの利用者は先発薬メーカーであるが、OTC医薬品会社にも対象を広げた。OTC医薬品会は、市場環境が厳しくなっており、効果的なマーケティングが求められる。薬局、ドラッグストアで販売される一般用医薬品(OTC医薬品)には、POSデータがマーケティングに利用されている。ただし、店舗での購入者が、必ずしも医薬品の使用者とは限らず、データを読み違えることもある。ドライアイ用目薬は、ターゲットを20代の女性としているが、実際は10代の患者が増えているなど、想定と実態の乖離が生じている。同社は、診療データの利活用でエビデンスに基づくマーケティング戦略の構築を支援する。ドラッグストアにとっても、棚割りを決めるときの有用なデータとなろう。

2015年4月に「機能性表示食品制度」がスタートした。サプリメント、加工食品、生鮮食品などの製造販売事業者は、国のガイドラインに沿った安全性・機能性の根拠となる情報を揃えて提出し、受理されれば、対象食品を機能表示食品として販売できることになった。同社は、6月より新制度を見据えた製品戦略の構築に寄与する診療統計データ分析レポート「Medical Trend Report for 食品・機能性食品」の提供を開始した。価格は25万円になる。食品・機能性食品向けの客観的な疾病市場分析として、市場規模比較、疾病カテゴリー別属性分析や属性別疾病ランキングの年次トレンド分析だけでなく、2015年・2016年の予測も収載している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)

《HN》

 提供:フィスコ

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