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【特集】ソフトバンテク Research Memo(6):「IoT」など成長ドライバーとなる新ビジネスを本格的に開始


■次の飛躍に向けた新たなビジネスへの取組み

ソフトバンク・テクノロジー<4726>は現在、「機器販売からサービス提供へ」というビジネスモデルの転換を進めている。第1四半期の決算からも、注力3事業を中心にストック売上高が順調に拡大を続けている点などから、この構造改革が着実に進展していることが理解できよう。ただ、同社は既存3事業の拡大だけにとどまらず、次の成長ドライバーとなる可能性が高い新たなビジネスへの取組みを本格的に開始した。既存事業の延長線上にあって、大きな市場となることが確実に期待できるビジネスであることから、本レポートでは別項目を立ててトピックスとして紹介する。

新たなビジネスとは、「IoT(Internet of Things)」である。近い将来、あらゆる機械や電気製品がインターネットでつながり、これらデバイスの使用データをクラウド上に蓄積・分析してフィードバックすることによって、生活の利便性が大きく高まることが期待されるビジネス領域である。ただ、現状は自動車や家電品などのデバイスの開発は進んでいる一方、実際にこれらをインターネットで接続する際のセキュリティ対策が、これからの大きな課題となっている。同社は、この分野のビジネスに乗り出そうとしている。同社には、OSに関してはミラクル・リナックス、デバイスが通信を行う際のセキュリティに関してはサイバートラストという国内では唯一の技術を持つ子会社がある。この優位性をIoT事業に生かし、安全なデータ連携を実現するIoT向けのセキュリティプラットフォームの開発を推進する戦略である。

具体的な取組みとしては、ミラクル・リナックスがユビキタス<3858>と車載向けのIoT組込みLinux統合ソリューションの開発に着手し、2015年1月にはプロトタイプを開発した。サイバートラストは6月にドローン(無人航空機)の安全な操作とデータ送信環境を構築することを目的とした「セキュアドローン協議会」を関係5社と設立し、北海道と沖縄で実証実験を開始した。

これらは、まだ研究開発の段階であるが、ビジネスとして動き出したものもある。ソフトバンクロボティクスとアルデバラン社が開発した感情機能を搭載した人型のパーソナルロボット「Pepper」の企業活用に関するビジネスで、子会社のM-SOLUTIONS(株)とサイボウズ<4776>が共同で「Pepper」にセリフや、動作、胸の表示板の画像を簡単に入力できるモジュール「kintone POSTボックス」及び「kintone GETボックス」を開発し、無償公開を始めた。「kintone POSTボックス」は「Pepper」の動作アプリを制作するデベロッパー用に開発、「Pepper」の開発環境をサイボウズのアプリ開発プラットフォーム「kintone」上にシンプルに表示し、アプリを開発できる。「kintone GETボックス」はプログラムの知識がまったくない人でもパソコン上から簡単な入力で指示ができる。M-SOLUTIONSは、このモジュールで展示会のアンケート調査を行わせるデモンストレーションも実施した。今後、無償版モジュールで「Pepper」の利便性を企業に伝えるとともに、無償公開版では難しい指示に関しては有償でプログラムを提供していく。2015年10月に予定されている「Pepper for Biz」が、企業でのロボット活用の浸透を後押しすれば、ロボットアプリ事業の拡大も見込まれる。さらに将来的には、「Pepper」も自動車やドローン同様にIoTのデバイスの1つとして活用される環境を作り上げる戦略を進める。

【参考情報】
事業別の業績及びトピックスで紹介した同社サービスの内容は、以下のとおりである。

・「みやすい解析」
自治体や官公庁のWebサイトのアクセスログを簡単に解析できるツール。解析技術を持たない人でも対応でき、解析結果をもとにしたWebサイトの改良により、住民サービスの向上が図れる。ソフトバンク・テクノロジーが独自開発した「純国産」製品であるため、自治体・官公庁側も利用に安心感が持てる。

・「AdMetrics」
Web広告の効果を“見える化”し、効率的な広告投資を支援するコンサルティングサービス。専門部隊が広告の投資対効果を計測・分析した上で、顧客の事業戦略に応じた独自の統計モデルによって分かりやすく表示。広告投資戦略のアドバイスをする。

・「デジタルマーケティング基盤の構築支援サービス」
クラウドプラットフォーム上に構築した次世代型のCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を中心にWebサイト戦略立案、アクセス解析、ターゲティング、セキュリティ対策、多言語化・グローバル対応、Webフォントサービスなど、デジタルマーケティングプラットフォームの構築から運用までをワンストップで提供するサービス。

・「PEP」
サービスの正式名称は「Public opened Email Protection」。標的型メールの脅威を“見える化”し、隔離までを行うクラウド型の運用サービス。メールアドレス単位で購入でき、コストの問題から公開メールアドレスだけでまず導入するといったことも可能になっている。

・「Imperva Incapsula(インパーバ インカプスラ)」
米国カリフォルニア州に本社を置く、世界的なWebセキュリティ企業であるImperva社が世界中に設置しているシステムを活用してWebアプリケーションファイアウォール、DDoS対策、グローバルロードバランス(DR)、CDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)によってクライアントのWebサイトをトータルで守るサービス。

・「FireEye + i-FILTER連携ソリューション」
標的型メールといった標的型サイバー攻撃の侵入を検知する「FireEye」と、標的型攻撃で使われる外部のC&Cサーバーとの通信を遮断する「i-FILTER」の2つを融合させたサービス。標的型攻撃を発見するとすぐに外部サーバーとの連絡を遮断する。通信の「入口」と「出口」の両方で攻撃に対応することで、より安全なWebセキュリティ環境が確保できる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柄澤 邦光)

《HN》

 提供:フィスコ

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