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【経済】一尾仁司の「虎視眈々」:余波続くも、何とか踏みとどまる


○VWショック余波、新興国懸念続く

VW不正は欧州に広がり、自動車業界への懸念が続いている。この日はBMWにも波及する恐れが伝えられたが、BMWとダイムラーが揃って「排ガスデータを操作していない」と表明し、波紋抑制の攻防となっている。VWは人事刷新を進めるが、米国で訴訟ラッシュの流れ。VWの販売動向では14年に36%を占めた中国(世界販売台数1014万台のうち中国が367万台)の動向が焦点となろう(昨年、中型セダン「サギター」のリコール問題で中国内113都市で抗議活動が起こり、シェアは21.3%から第1四半期に18.0%に落ち込んだ経緯がある)。

ドイツDAX指数は1.92%安。ただ、9月IFO景況感指数は、予想(107.9)に反し108.5に上昇、ドイツ経済自体への懸念には発展していない。

もう一つは新興国経済への懸念。象徴的となったのは、米建機大手キャタピラーが通期の売上高見通しを下方修正(2ヵ月で2度目)、最大1万人規模の人員削減を発表したこと。キャタピラー株は6.3%安。シティグループの調査によると、新興国への資金流入額が1990年代後半のアジア通貨危機以来の低水準に沈んでいる(過去4四半期流入額840億ドル)。新興国の外貨準備の伸びは約20年ぶりのペースに鈍化している。新興国や資源国経済への懸念が強まっているが、格差はある。この日は比較的余裕のある台湾とフィンランドが利下げに動いた。

イエレンFRB議長は講演で年内利上げ開始の想定を維持したが、短期金利先物市場での利上げ確率は、来年1月が最大の46%、12月は35%、10月は11%。米10年国債利回りは2.1~2.3%水準で推移し、現状は2.0%を意識した(先月の中国懸念で一時2.0%割れ場面があった)下限ゾーンでの展開。NYダウは何とか16000ドルで踏み止まっている印象だ。

○米中首脳会談を注視

米国がローマ法王受け入れをぶつけたとして、印象が薄くなっている習近平中国国家主席の米国訪問だが、本日、米中首脳会談が開催される。13年の習?オバマ会談時に、米国は市場開放、国有企業改革などを強く求めた。項目に入っていたかどうかは不明だが、これらは中国の利権構造を変えないと実現できない。習体制での激しい腐敗追及、権力闘争はその必要条件の一つと見られてきた。例えば、石油閥の周永康を失脚させることで国有石油企業の改革を行い、石油メジャーが参加する形で中国のシェール開発を推進する狙いだったとされる。当時、G2(米中二大国の“新型の大国関係”)構想と言われた一端だ。しかし、腐敗追及・権力闘争は上海閥などとの全面戦争状態に追い込まれ、石油価格は(シェール潰しとも言われる動きで)暴落している。

習主席が中国経済は健全と叫び、市場は安定し改革開放に向かっているとの演説を行ったことは当時の米中関係復活を目指していることを示唆する。俄かに、民間資本受け入れの国有企業改革(今回は大統合による競争力強化を謳うが)を発表したことも連動する。

焦点は米国がこれにどう対応するかだ。米企業の中国市場参入を加速させたい、人民元安は許さない、経済クラッシュは容認しないなど、想定される米国の要求を中国が受け入れる姿勢を示せば、一旦、中国危機は遠ざかる可能性が考えられる。

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」

《FA》

 提供:フィスコ

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