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【特集】「関心高まる事業承継問題」 【株経トップ特集】


―売り手増加、M&A関連企業に追い風―

 経営者の高齢化に伴って事業承継が大きな問題となっている。中小企業では後継者がいない場合、事業を清算しようにも借金が残ることで引退できないというジレンマに陥るケースが少なくない。そこで有効な解決策として注目されているのがM&A(合併・買収)を活用した手法で、売り手の増加はM&A関連企業にとって追い風となっている。

●後継者不在に悩む中小企業

 今年は戦後生まれのいわゆる「団塊の世代(1947~49年生まれ)」のすべてが65歳以上となり、事業承継は「2015年問題」としてさらに深刻化。総務省が7月に発表した個人企業経済調査によると、2014年時点で後継者がいると答えた割合は「製造業」で17.7%、「卸売業、小売業」で22.6%、「宿泊業、飲食サービス業」で15.6%、「サービス業」で17.1%にとどまっている。

 事業承継は会社の経営権そのものである自社株式を誰に引き継ぐのかということが最も重要となるが、少子化や厳しい経営環境などを背景に親族が事業を引き継がない例が増えている。廃業して会社を清算することになれば、長年にわたって築き上げた商圏や技術、経営ノウハウがなくなってしまうほか、そもそも通常の清算手続きは資産により負債がすべて返済できることが前提となっている。一方、M&Aを使った手法では後継者がいない場合でも廃業することなく事業を引き継ぐことができ、従業員の雇用や取引先との関係も維持される。

 また、M&Aでは現経営者が売却利益を獲得できることも大きなメリット。会社清算では資産を現金化して債務の返済に充てたあとの残余財産に所得税や住民税が課せられるのに対し、M&Aではいわゆる“営業権”や“のれん”といったものが売却価額に上乗せされ、さらに課税関係も譲渡益課税20%で終了し、結果的に経営者の手取り額が多くなる場合が多い。

 中小企業庁の調査では20年前に3%前後だった社外の第三者承継の割合は20%近くまで上昇しており、M&A関連会社の活躍の場が広がっているといえそうだ。

●日本M&Aの成約件数66%増

 日本M&A <2127> は、中堅・中小企業のM&A支援に強みを持つ。15年3月期通期の成約件数は前期比32%増の338件(売り案件と買い案件をそれぞれ別カウント)となり、M&A売上高は同16%増の120億900万円に拡大。今16年3月期第1四半期(4-6月)の成約件数は前年同期比66%増の108件と四半期ベースで過去最高を記録した。「6月から東京、大阪、名古屋など計7地域8会場で開催した『経営者のためのM&Aセミナー』に過去最多となる累計約2800人が参加するなど、後継者問題の解決策などのM&Aニーズが強い」(営業企画部)と確かな手応えを感じている。

●M&Aキャピやタナベ経営も注目
 
 M&Aキャピ <6080> も、中堅・中小企業をメーンにM&Aのアドバイザリーサービスを提供。15年9月期第3四半期(14年10月-15年6月)の累計成約件数は34件(前期累計は35件)と過去最高のペースで増加しており、通期見通しを従来の38件から41件に上方修正。今後も反響型営業(セミナーやWEB、紹介など)の強化などにより、年平均20%の成約件数増加を目指すとしている。

 タナベ経営 <9644> [JQ]は事業承継支援や戦略判断、各種セミナーによる人材教育といった経営コンサルティングサービスを提供。16年3月期第1四半期(4-6月)の同事業の売上高は前年同期比14%増の11億4000万円と順調に伸びている。

 このほかでは、山田コンサル <4792> [JQ]やFPG <7148> 、JIA <7172> [東証M]、青山財産 <8929> [東証2]などにも商機がありそうだ。

●三井住友など金融機関も関心

 中小企業の主要取引先となっている地方銀行をはじめ大手金融機関なども関心を強めている。

 三井住友FG <8316> は8月26日に、三井物 <8031> および日本政策投資銀行との合弁による新たなエクイティファンドを10月に設立すると発表。3社が持っているネットワーク、企業価値向上やファイナンスのノウハウなどを活用し、後継者不足などに悩みを持つ企業の事業承継や経営再建を支援する。

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