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【特集】テラ Research Memo(5):樹状細胞ワクチン療法の症例数が想定を下回り業績を下方修正


■決算動向

(1) 2015年12月期第2四半期累計の業績概要

8月7日付で発表されたテラ<2191>の2015年12月期第2四半期累計(2015年1月?6月)の連結業績は、売上高が前年同期比5.9%増の1,092百万円、営業損失が229百万円(前年同期は105百万円の損失)、経常損失が244百万円(同125百万円の損失)、四半期純損失が267百万円(同129百万円の損失)となった。

売上高は医療支援事業において、2014年8月より少額短期保険事業が加わったことにより増収となったが、利益面では樹状細胞ワクチンの薬事承認取得に向けた開発費用の増加や、一部連結子会社の立上げ負担の増加などにより損失幅が拡大する格好となった。期初計画に対して業績は下方修正となったが、これは細胞医療事業における樹状細胞ワクチン療法の症例数が想定を下回ったことが主因となっている。事業セグメント別の動向は以下のとおり。

○細胞医療事業
2015年12月期第2四半期累計の細胞医療事業の売上高は、前年同期比0.3%増の526百万円、営業損失は90百万円(前年同期は95百万円の損失)となった。当第2四半期累計期間の樹状細胞ワクチン療法の症例数は599症例と前年同期の629症例から減少したものの、より治療効果が高いとされる新規がん抗原「WT1クラス2ペプチド」との併用が開始されたことにより、売上高は微増収となった。

なお、症例数は2012年以降、減少トレンドが続いており、四半期ベースで見ると当第2四半期は約290症例と300症例を割り込む水準となっている。樹状細胞ワクチン療法で競合する企業や医療機関などが増加したことが要因として挙げられる。一方で、エビデンスの強化は着実に進んでおり、2015年1月には東京慈恵会医科大学、2015年3月には慶應義塾大学で発表した論文が専門誌に掲載されている。同社ではセミナーを通じた患者への情報提供を継続して行っていくほか、エビデンスの強化による医師への認知度向上、契約医療機関の拡大を進めていくことで、症例数を回復させたい考えだ。2015年6月末の契約医療機関数については前期末比横ばいの37件となっている。

○医療支援事業
2015年12月期第2四半期累計の医療支援事業の売上高は、前年同期比4.1%減の566百万円、営業損失は82百万円(前年同期は48百万円の利益)となった。売上高は、2014年8月に少額短期保険事業であるテラ少額短期保険が加わったものの、前年同期に大型案件の売上計上があった細胞培養関連装置等販売の反動減により、全体では減収となった。また、利益面では一部連結子会社が立上げフェーズにあり、費用増が先行したことから損失計上となっている。なお、子会社別で見るとバイオメディカ・ソリューションが減収減益となり、テラ少額短期保険、タイタン、オールジーンは少額ながらもすべて営業損失を計上している。

○医薬品事業
医薬品事業では、がん治療用再生医療等製品として膵臓がんに対する薬事承認取得に向けた開発体制の整備や開発費用の計上などにより、営業損失として71百万円(前年同期は54百万円の損失)を計上している。

なお、2015年3月に再生医療・細胞医療の要素技術である免疫細胞の凍結保存液に関する独占的通常実施権を取得している。同技術を用いた保存液を使うことで、樹状細胞の機能を維持したまま搬送し、長期保存が可能となる。現在の連携医療機関における樹状細胞ワクチンの搬送において、同保存液の導入が可能となれば、今後更なる連携医療機関の広がりが期待できることになり、細胞医療事業における樹状細胞ワクチン療法の症例数増加につながる可能性がある。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《HN》

 提供:フィスコ

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