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【特集】冨田康夫の「下期の有望テーマと注目銘柄(2)」


「監視カメラ」

●犯罪抑止や災害対策で需要加速

 世界の監視カメラ市場が急成長をみせている。矢野経済研究所は8月7日、監視カメラ世界市場について調査を公表、2018年には14年に比べ約1.7倍の規模に成長するとの見通しを明らかにした。14年の監視カメラ世界市場規模は2545万台(前年比では10.9%増)となったと推定される。さらに、18年には4320万台と急成長を見込んでいる。

 国内では、相次ぐ凶悪犯罪の犯人逮捕への有力な捜査手段として、さらに犯罪発生への抑止効果を狙って、監視カメラがさらに普及する可能性がある。JR東海は、東海道新幹線での放火事件を受け18年度までに新幹線の全編成の約9割に防犯カメラを設置する方針を明らかにしている。また、大阪・寝屋川市の中学1年生殺人・死体遺棄事件の発生を受け、同市の北川法夫市長は定例市議会で、市内4駅の周辺に防犯カメラを40台増設する議案を提案した。

 一方、豪雨など自然災害対策としての用途でも需要拡大が予想される。国土交通省は8月25日の16年度予算概算要求で、気候変動で頻発する水害、土砂災害や、火山災害への対策に5984億円を計上。これは噴火による土石流対策を強化するため、監視カメラやセンサーの整備などを進めるもの。

 さらに、アジア地域では、インフラ整備に伴い、公共施設での需要が堅調に推移している。タイなどの東南アジア地域では、商業施設での監視カメラ導入が進む。一方、中国では「公安」からの需要が大きく、中東地域では各国の建設需要や、テロ対策に向けた監視システム需要の拡大が見込まれる。

●「監視カメラ」関連の注目銘柄は?

★TOA…アジア向け需要も急拡大

 TOA <6809> は放送関連設備の大手だが、監視カメラでも高シェアを占めている。16年3月期は、国内でセキュリティ分野の成長が見込めるほか、アジア地域のモスクやインフラ設備向け製品などの伸びが続く見通し。16年3月期の連結業績予想は、売上高495億円(前期比9.6%増)、営業利益47億円(同10.9%増)で、過去最高益を更新する見通し。また、18年3月期を最終年度とする新中期経営計画がスタート、最終年度に売上高550億円、営業利益55億円を想定している。同社は監視カメラでも高シェアを占めており、2020年の東京五輪に向けた需要増も期待されている。

★あいHD…マンション向け監視カメラが拡大

 あいHD <3076> は、マンション向け主力に監視カメラやレコーダーなどのセキュリティ機器を手掛けている。マンション向け監視カメラけが伸びているほか、北米個人向けカッティングプロッタも新製品による成長が期待されている。化学品の危険有害性(ハザード)の分類基準などに対応する化学薬品工場向けのラベル用のプリンターの需要拡大も見込まれる。セキュリティ需要の高まりと世界的な化学薬品に対する防災意識の高まりなどのテーマ性にも乗る銘柄として注目。16年6月の連結業績は、売上高520億円(前期比25.8%増)、営業利益83億円(同16.6%増)と大幅な増収増益を見込む。

★Tホライゾン…超小型など得意分野を深耕

 Tホライゾン <6629> [JQ]は、カメラ部分が上下・左右に自由に動くものや、親指サイズなど超小型などの特徴のある分野を得意とする。一方で、連結子会社のエルモ社が、全天球パノラマ撮影用カメラシステムQBiC Panoramaの新製品「QBiC Panorama X」を9月24日に発売すると発表。この新製品は、商業用を中心に世界的な全天球パノラマ動画の需要が高まっていることを受けてプロフェッショナルカメラマン向けの撮影機材として発売したもの。16年3月期の連結営業利益は2億5000万円(前期比3.4倍)を見込む。

★キヤノン…世界トップ企業買収で本格参入

 キヤノン <7751> は今春、監視カメラで世界トップ(シェア17.5%)メーカーのスウェーデン企業アクシス社を買収(買収総額3337億円)し、一気にこの分野の主役に踊り出た。キヤノンが得意としていた個人向けのデジタルカメラ市場が年々縮小するなかで、法人向けの監視カメラの需要は拡大の一途にある。同社はこうした監視カメラを新規事業拡大の一環として育成するのに加え、将来的に膨大な市場が見込める“ビッグデータ”関連ビジネスへの展開も視野に入っているようだ。

★パナソニック…スマホ絡め個人向け市場開拓

 パナソニック <6752> は8月26日、スマートフォンと屋内外に設置した監視カメラやセンサーをインターネットでつなぎ、防犯や高齢者の安否確認などに役立てる家庭向けの「スマ@ホーム システム」を10月から発売すると発表した。外出先からスマートフォンで自宅の様子を監視できる新しいシステム。カメラには音や動きに反応するセンサーが付いていて、赤ちゃんが泣いたり、不審者が侵入したりすると、スマホにその映像が映し出される。想定価格はカメラと通信用機器セットで約2万8000円から。パナソニックは関連事業の売上高を2018年度に世界で400億円規模に増やす目標だ。

情報提供:日刊株式経済新聞

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