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【経済】消費税軽減税率、還付案は天下の愚策だがその真意は


消費税率を10%に引き上げる際に、食料品等については税率を軽減する消費税軽減税率が検討されてきたが、ここにきて財務省が引き上げた2%分を払い戻すという還付制度を提案してきた。その内容は買い物の際にマイナンバーカードを利用し、買い物の内容を読み取り機で記録し、その後ネットを利用して2%分について払い戻しを受けるというものである。そして、富裕層に過度に還付して税収が減少することを防ぐために上限は4000円にするとのことである。
 しかし、この制度の構築のために一体どれほどのコスト・税金が必要になるのであろうか。一部の報道では、還付をするための機関(「軽減ポイント蓄積センター」(仮称))を設立することも検討されているという。国民の一人一人が全ての買い物の際に、極めて重要な個人情報が積み込まれているマイナンバーカードが必要だとすると、どのような仕組みを作っても情報の漏洩や紛失等の事故が多発することは間違いない。国民の手間というコストも膨大なものがある。読み取り機も国の負担で全国の全ての小売店等に配布するのだろうか。
 これでは4千円の還付をするために4万円のコストをかけるようなものだ。そしてそのコストは終局的には税金で賄われることになるので、結果的には増税になってしまうという本末転倒なことになりかねない。
 このような制度を実施するなら、いっそのこと還付のシステムなど作らず、一律に国民一人あたり4千円配布したほうがましである。
 
 消費税軽減税率自体が様々な問題をはらんでいるが、財務省がこのような拙劣とも思えるような案を出してきたのはなぜだろうか。
 うがった見方をすると、消費税軽減税率の議論を盛り上げて、消費税率を10%に上げること自体は所与の前提にしてしまう戦略なのかもしれない。
 軽減税率の制度をどうするかに議論が集中すればするほど、10%に上げること自体は当然のこととして捉えられるようになる。
 しかし、デフレから脱却できない間に消費税を再度上げてしまうと、日本経済は再度深い谷に落ちてしまう恐れがあるということを忘れてよいのだろうか。
 昨年、消費税を一気に3%も上げるという大きな過ちを犯したことにより、日本経済は大きく失速し、現在もデフレから脱却できない状態となっている。
 デフレから脱却できない間に消費税率が10%になれば、日本は永遠にデフレから脱却するチャンスを逃すだろう。
《YU》

 提供:フィスコ

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