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【特集】郵政3社上場、市場活性化の起爆剤となるか 【前編】


―NTTブーム再来に期待感―

 郵政3社の上場申請を東京証券取引所が承認する9月10日が近づいてきた。新規上場は11月4日に予定されている。2005年の小泉改革以来の郵政民営化が、10年を経て新たな段階を迎える。NTT <9432> 以来とされる大規模な政府保有株の売却を伴う新規上場となる。これに関連して個人投資家の株式投資への関心が高まることが予想されるなど、このところの世界同時株安で低迷ぎみの株式市場活性化の起爆剤として期待を集めそうだ。

●売却収入の一部は復興財源に

 政府が株式の100%を保有する持ち株会社の日本郵政と、金融子会社であるゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の3社がそろって同時上場する。これにより、政府関連の株式公開としては1987年のNTT以来の大型案件となる。これまで株式投資に関心の薄かった一般個人の株式投資参入促進のきっかけとしての期待が高まる。

 政府は、保有株の売却収入を東日本大震災の復興財源に充てる一方、日本郵政は金融子会社2社の株式上場で得られる売却収入の一部を自社株の購入資金に充てる計画で、大型上場で市場にマイナス影響が及ばないよう配慮する。

●総額1~2兆円程度の売り出しに

 日本郵政グループの株式上場では、売り出し価格や規模はまだ明らかにされていないものの、3社とも初回に全株の10%程度、総額1~2兆円規模の売り出しになると見込まれている。通常、全株式の35%以上を市場に流通させるのが東京証券取引所の原則ルールとなっているが、日本郵政グループで一度にそれだけの規模を売りだすと株式市場への影響があまりに大きいため、今回は株式市場での円滑消化のために特例措置を求めていくと見られている。

●10月中下旬にも売り出し価格決定

 上場承認後、郵政3社は海外を含む投資家向けの広報(IR)活動を本格化する一方で、並行して主幹事証券各社が投資家の需要調査を行う。その調査結果に基づいて10月中下旬にかけて、まずゆうちょ銀、かんぽ生命の金融2社、続いて日本郵政の順に売り出し価格を決める見通しだ。

 日本郵政株売り出しの主幹事証券会社はすでに発表されており、大和、野村、みずほ、三菱UFJモルガン・スタンレー、SMBC日興、ゴールドマン・サックス、シティグループ、JPモルガン、UBS、岡三、東海東京の11社。郵政3社の新規公開株を購入するには、これら11社の証券会社か、そのグループに属する証券会社に口座を開設するのが早道といえる。

●NISA絡めブームの起爆剤に

 市場関係者からは「“郵政”の地域密着度は、NTTやJR各社以上に強い面もあり、これまでに株式投資に関心の薄かった層を呼び込む起爆剤になる」とマーケットの活性化を期待する声があがっている。

 1987年2月に上場したNTTの場合、それまで株式市場と縁のなかった一般の人々からの注目度が急速に広がりをみせ、その後の投資ブームのきっかけとなったという経緯がある。さらに今回は、昨年からスタートしたNISA(少額投資非課税制度)との相乗効果もあり、NISA口座は開設したものの、まだ実際の買い入れに至っていない顧客が株式投資に初めて参加するケースも増えそうだ。

●限度額引き上げで企業価値向上へ

 郵政3社の収益力強化のため、自民党の「郵政事業に関する特命委員会」は、今秋中にゆうちょ銀行の預入限度額を現行の1000万円から2000万円まで引き上げ、2年後までに3000万円に上げる提言をまとめた。また、かんぽ生命保険の加入限度額も現行の1300万円から2000万円に引き上げるという。ただ、金融界からは「民業圧迫だ」との批判が出ているうえ、総務省や金融庁は政令改正を慎重に検討するとみられ、実現は不透明で曲折が予想される。いずれにしても、自民党は上場に前後して郵政グループ3社、特にゆうちょ銀行の企業価値を高めようとする政策を検討している。

 ゆうちょ銀の貯金残高は約178兆円(2015年3月末)と、預金残高で民間トップの三菱東京UFJ銀行(約153兆円)を大きく上回っている。

【後編に続く】/ 日刊株式経済新聞 編集長 冨田康夫

【徹底特集! 郵政3社IPO】より

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