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【特集】カドカワ・ドワ Research Memo(5):電子書籍はdマガジンが伸長し好調が続く


■業績動向

●2015年3月期(2014年10月?2015年3月の6ヶ月変則決算)業績
KADOKAWA・DWANGO<9468>の売上高は100,566百万円、営業利益は1,391百万円、当期純利益は14,055百万円となった。

売上高は、紙媒体の雑誌販売の低迷とそれに伴う広告収入の減少により情報メディア事業と、会員の減少によりモバイル事業がそれぞれ苦戦を余儀なくされたというマイナス要因があったにもかかわらず、1)電子書籍販売が増加、2)妖怪ウォッチなどDVD販売が好調であったことや海外におけるアニメ版権売上が拡大したこと、3)プレミアム会員数が順調に増加したことによりポータル事業も堅調に推移した?-などでカバーし、100,566百万円を確保した。

一方、営業利益が1,391百万円にとどまったのは、経営統合費用が発生したことや、ゲーム事業で不採算タイトルの開発中止によりゲーム事業が赤字となったことが主要因。なお、当期利益は、KADOKAWAでセカンドキャリア支援プログラム実施に伴う特別損失5,038百万円※、ドワンゴでバンタン、トリスタ、MAGES.ののれん等の減損損失5,610百万円を特別損失として計上したマイナス要因があったものの、負ののれん発生益22,301百万円の特別利益を計上したことでカバーし、14,055百万円を確保した。

※KADOKAWAは、出版市場が継続的に縮小しているアゲインストな環境にあり、過去同社が行ってきた企業再編(買収、合併、分割)により、業務の重複、人員の偏在等が散見される状況となっていた。その解消および強い組織の構築を図るため特別支援金の支給と支援会社を通じた再就職支援の優遇措置を行う、2015年3月31日時点で満41歳以上かつ勤続年数5年以上の正社員300人を募集。結果は232人が応募したことに伴う損失。

●2016年3月期会社計画
売上高は200,500百万円、営業利益は7,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は4,000百万円を見込む会社計画。

セグメント別に見ると、15年3月期(6ヶ月決算)比較で書籍IP事業、映像IP事業、ポータル事業、モバイル事業で黒字継続、ゲーム事業、その他事業は黒字転換、情報メディア事業とライブ事業の赤字継続という計画となっている。また、情報メディア事業の赤字額は、構造改革効果の顕在化などを見込むため、15年3月期(6ヶ月決算)並みの水準にとどまり、縮小トレンドに転換すると予想している。

●2016年3月期第1四半期(4月?6月)業績
売上高は46,906百万円、営業利益は1,145百万円、親会社株主に帰属する四半期純損失は220百万円となった。セグメント別について見ると、書籍IP事業、映像IP事業、ポータル事業、モバイル事業、その他が営業黒字を確保。対照的に、情報メディア事業、ライブ事業が営業赤字となった。

書籍IP事業は、売上高が17,515百万円(15年3月期1月?3月期18,924百万円)、営業利益は287百万円(同1,332百万円)となった。売上高、営業利益ともに15年3月期1月?3月期に比べ減少した。電子書籍はdマガジンの伸びもあり前年同期比117.2%増の3,240百万円と好調が続く格好となったほか、紙媒体では単行本は本屋大賞受賞した「鹿の王」などのヒット作があり、一般文庫も好調に推移。しかし、メディアミックス作品が少なく、ライトノベル、コミックが苦戦したマイナスをカバーできなかった。営業利益が287百万円にとどまったのは、出版取次の栗田出版が民事再生法を申請したことにより、中小規模の出版取次店に対する貸倒引当金約7億円を積み増したことが主要因。

情報メディア事業は売上高が6,491百万円(15年3月期1月?3月期7,930百万円)、営業損失は615百万円(同726百万円)となった。売上高は既存紙媒体のネット・デジタル化に伴い、雑誌販売が減少したほか、雑誌広告収入も減少したことなどにより、前四半期に比べ10億円強の減収を余儀なくされた。ただ、販管費は前四半期に比べ抑制され、事業構造改革の効果が費用面で顕在化したことも手伝って、営業損失は縮小した。なお、書籍IP事業同様に中小規模の出版取次店に対する貸倒引当金約1億円を積み増した。

映像IP事業は、売上高5,794百万円(15年3月期1月?3月期7,627百万円)、営業利益は259百万円(同169百万円)を確保。映画製作配給で一部目標未達などのマイナス要因があり、売上高は前四半期に比べ減少する結果となったが、営業利益は映画「妖怪ウォッチ」などのパッケージ作品の寄与により前四半期に比べ増加した。

ポータル事業は売上高4,822百万円(15年3月期1月?3月期4,754百万円)、営業利益は610百万円(同646百万円)となった。6月末のプレミアム会員数が248万人へ増加(3月末244万人)したことに伴い、プレミアム会員収入が順調に増加したことで増収を確保したものの、エンジニアの増加による人件費増等のコスト増加がマイナス要因として働き前四半期比で微減益となった。

ライブ事業は売上高1,329百万円(2015年3月期1月?3月期699百万円)、営業損失は271百万円(同189百万円)。売上高はニコニコ超会議2015の開催がプラス寄与し前2四半期に比べ大幅に増加。対照的に、営業損失はニコニコ超会議の外注費や支払手数料増加などがマイナス要因となり前2四半期の損失額を上回った。ただ、同社ではメディアへの露出による広告宣伝効果や「niconico」のユーザ満足度の向上に寄与をしたと評価している。

モバイル事業は売上高2,313百万円(2015年3月期1月?3月期2,426百万円)、営業利益956百万円(同768百万円)を確保。売上高はスマートフォン及びフィーチャーフォンともに会員数が減少したことにより前四半期にくらべ減収を余儀なくされたものの、営業利益は広告宣伝費の抑制に加え、全般的にコストコントロールを強化した効果が顕在化したことなどにより、前四半期で増益を確保した。

ゲーム事業は売上高3,671百万円(2015年3月期1月?3月期3,147百万円)、営業利益535百万円(同営業損失1,255百万円)となった。前期にあった不採算タイトル開発中止によるマイナス要因がないことや、「ウィッチャー3 ワイルドハント」、「英雄伝説 空の軌跡」、「風来のシレン5plus」の販売が好調に推移したことに加えて、「Bloodborne」の成功報酬発生により大幅増益を確保した。

その他は売上高6,058百万円(2015年3月期1月?3月期6,172百万円)、営業利益136百万円(同営業損失162百万円)。営業利益はバンタンを子会社化した効果がプラス寄与し前四半期の赤字から黒字転換した。

弊社では、映像IP事業及びゲーム事業では、タイトルの発売・配給時期の期ずれによる下振れリスクがあるものの、前期に実施した構造改革の効果が費用面で顕在化し始めていること、電子書籍の販売好調が続いていること、第1四半期に実施した中小取次店に対する貸倒引当金の積み増しは第2四半期以降実施されないと見られること、などを考慮すると、2016年3月期の計画達成に向けて順調なスタートを切ったと見ている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 森本 展正)

《HN》

 提供:フィスコ

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