市場ニュース

戻る
 

【市況】【コモディティー】商品市場は懐疑のうちに育ち始めている /菊川弘之氏 <夏の相場観>

日本ユニコム・調査部主席アナリスト 菊川弘之氏

 「強気相場は悲観のなかで生まれ、懐疑のうちに育ち、楽観とともに成熟し、陶酔のなか消えていく」。ジョン・テンプルトンの相場格言だが、昨年末に多くの銘柄が生産コスト水準まで下落した商品市場は、今年に入って徐々に懐疑のうちに育ち始めている。

 NY金は株高・ドル高の流れを嫌気して大きく下落したが、1150ドル水準では押し目を買い拾われ、下値支持感が高まっている。「通貨の顔」として売られた金だが、「モノの顔」としての生産コストで下値を固めている状況だ。米国の引き締め観測に伴うドル高で何度となく売られたものの、ドルが下値を切り上げていく中、NY金は生産コスト水準での横ばいを続け、ドル高に対しての売り圧力は徐々に限定的となっている。過去の米利上げ局面を振り返って見ても、実際の利上げが開始されてからは、金は下値を切り上げているパターンが確認できる。今夏は1150ドル~200日移動平均線でのもち合いで底固め、次なる放れを待つ格好となりそうだ。

 世界的に株高と実体経済との乖離が大きくなっているが、この異常な状態が「陶酔のなか消えていく」時、金の「安全資産の顔」が光り輝き始めるだろう。また、ISILがイラクに勢力を拡大する中、「敵の敵は味方」との構図で、米国・イランの関係が接近することで、核開発協議の合意・制裁解除となると、一時的に原油市場が嫌気する可能性はあるものの、中期的にはイランの核開発進行、それに対抗するサウジの核保有・核拡散、イスラエルの単独攻撃などの思惑が高まり、金や原油の中期的な下値支持要因となりそうだ。豊作先取りの穀物市場も夏の天候次第では売り方の買い戻しを巻き込んで大きな相場を演じるリスクもあろう。

<プロフィール>

NYU留学後、商品投資顧問・証券会社の調査部・ディーリング部長などを経て現職。日経新聞、時事通信などにマーケットコメント・解説を寄稿。TV・ラジオなど多数メディアに出演中。中国・台湾でも現地取引所主催セミナー講師として講演。

編集企画:株経通信(株式会社みんかぶ)     【夏の相場観】特集 より

株探からのお知らせ

    日経平均