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【市況】【コモディティー】米利上げに先行し原油価格は上昇へ /江守哲氏 <夏の相場観>

エモリキャピタルマネジメント 代表取締役 江守哲氏
                          【夏の相場観】特集 より
 原油相場は、今夏に明確な形で底打ちから上昇に転じよう。そのきっかけは「米国の利上げ」である。米国の直近3回の利上げは、原油価格の底打ちから8カ月後に実施されている。ブレント原油の底打ちが1月、WTI原油は3月であることから、利上げは早ければ9月、遅くとも12月には実施されよう。利上げ後はドル高見通しが大勢だが、過去の例では利上げ後はドルが下落している。

 筆者は、昨夏以降の原油急落はドル高が原因と考えている。そのため、今後はドルが下落に転じれば、原油価格は上昇に転じるとみている。過去の実績では、原油価格は利上げ後の約3年間で3倍になっている。今回のWTI原油の底値は42ドルであり、2018年に向けて120ドル超を目指すことが想定され、この夏相場は今後の上昇局面入りの助走期間になろう。

 需給面に目を向けると、米国シェールオイル生産量の頭打ちやイランの精製施設の老朽化による生産拡大の限界、OPEC加盟国の余剰生産余力の低下、原油安による産油国の財政悪化など、生産・供給面は厳しい環境にある。サウジといえども、原油安が5年以上も続けば財政は大きく悪化する。持久戦に耐えられないOPEC産油国は国家が産油量を直接管理しているが、米国シェールオイル生産は採算重視の民間企業が行っており、原油価格がコスト割れの水準に下落するまで生産が続く可能性がある。

 つまり、サウジに代わって米国が産油量の調整役になるとの見方は誤りといえるが、その米国でさえも生産維持のために高い原油価格を必要としている。WTI原油の60ドル水準は世界の産油国にとって限界的な水準である。そのため、地政学的リスクや生産障害、ドル安などが原油価格を100ドルに押し上げることになろう。

<プロフィール>

慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事に入社し、非鉄金属取引に従事。1996年に英国住友商事(現欧州住友商事)に出向しロンドンに駐在。その後、Metallgesellschaft Ltd.、三井物産フューチャーズを経て、2007年7月にアストマックス入社。同社でファンドマネージャーに就任。アストマックス退社後、2015年4月にエモリキャピタルマネジメントを設立し、代表取締役に就任。ヘッジファンドを中心とした資産運用や株式・為替・債券・コモディティー市場の情報提供などを事業として展開。
エモリキャピタルマネジメント・ホームページ:http://www.emoricapital.com/
お問い合わせ:info@emoricapital.com

編集企画:株経通信(株式会社みんかぶ)     【夏の相場観】特集 より

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