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【市況】【植木靖男の相場展望】

「ギリシャ、株を走らす」

●ギリシャ問題が最大の警戒材料に

 株式市場では、6月24日に日経平均がITバブル時の2000年4月高値2万0833円を突破、18年半ぶりの高値を示現した。本来なら直近の株価習性として昨年5月安値から1年を経過した本年5月には一旦調整に入るところが、1ヵ月ほど延長となった。

 その背景はなにか? 企業収益の拡大期待、企業統治改革、スチュワードシップコード導入などで日本企業が劇的に変わる、また景気も回復期待が強まるといった好材料が指摘される。だが、なんといっても最大の理由は需給にあるとみる。

 旺盛な買い手、なかでも海外勢が圧倒的な力をみせている。本年3月末の日本株保有比率は30%を超え、日々の売買代金は60-70%を占める。わが国市場はまさにウィンブルドン現象となっている。年初からの買越額は2兆5000億円に達している。断トツである。

 かくして、市場は好材料に囲まれ楽観論が支配的となり、投資家の先高感は信念に近いものとなっている。個人でみても、信用買い残高は2ヵ月前に比べ、いまでは3兆円を超え10%増と年初来最大である。

 だが、好材料が増えれば増えるほど危機が忍び寄るのも相場の常。逆に不安材料が台頭してくる。いまはギリシャ問題が唯一、最大の警戒材料となっている。

 国内市場ではギリシャのGDPはユーロ圏で約3%のシェア、どうなろうと心配はない、との楽観論に覆われていた。だが、米国株価は、これを警戒してもたもたしていた。

 本稿を執筆しているのは6月28日だ。報道によれば、ギリシャのチプラス首相が提唱した国民投票はEUに拒否された。デフォルトリスクの高まりを受け、ユーロ圏はギリシャ破綻後のシナリオ作りに着手したともいう。

 だが、結論を出すのは尚早だ。ギリシャ国民の70%がユーロ圏残留を望んでいるといわれ、ドイツはドイツで経済での帝国化を夢見ているとすれば、大事の前の小事、怒髪天を衝くメルケル首相もここはジーッと我慢することも考えられる。

●株価の声なき声に従う

 いずれにしても、金融市場は思惑が交錯して暫くは乱高下をみせる可能性が大きい。

 わが国の株価は、米国のNYダウ、欧州の主役であるドイツのDAX指数、両大国の調整を尻目に6月一杯頑張ったが、最大の買い手である海外勢がここ2週連続して売り越しに転じている。

 需給の変化に加え罫線上からも不安の芽がある。6月26日僅か65円安といえども陰線となった。ここでの陰線はよくない。仮に近く、思惑で急騰し高値を更新することがあっても上値は限定的とみられる。

 ここからは株価の声なき声に素直に耳を傾けることが肝要だろう。高値圏、安値圏では材料にこだわることがいかに危険かは歴史の教えるところだ。こういう際は市場人気が全てである。

 さて、こうした中、投資はどうすべきか。投機をもって最良の手段と考える人はともかく、常識的には丁半博打のような相場には乗らず、ギリシャ問題が一段落してからの新しい上昇相場が始まる機会を待つことが賢明と思われる。

 もっとも、全般が調整局面にあっても個別には上昇に転じる、もしくは上昇基調を持続する銘柄は常に存在する。

 そこであえて挙げれば、インバウンド関連で17年12月期に売上高1500億円(15年12月期予想比2.1倍)を目標とするラオックス <8202> [東証2]や、米国塩ビ子会社が史上最高益を更新した信越化 <4063> 。

 また、利上げで収益拡大となる三菱UFJ <8306> 、消費拡大で冷凍食品が伸びるニチレイ <2871> などに注目したい。

2015年6月28日 記

株探ニュース

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