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【市況】【中国株】上海の株高、背後に膨張マネー /千原靖弘氏 <夏の相場観>

内藤証券中国部・情報統括課長 千原靖弘氏

 上海総合指数は09年7月から5年余りにわたり下落したが、14年11月から急伸。14年の年間上昇率は52.9%となり、日経平均の7.1%を大幅に上回った。急激な株高と商いの増加に、バブルと指摘する声もある。
 勢いは15年に入ってからも続き、6月5日には約7年5カ月ぶりに終値で5000ポイントを回復。07年10月16日に記録した過去最高値まで、残り1000ポイントあまりとなった。6月に入りIPOによる需給悪化などで4000ポイント付近に後退したが、それでも1年前の約2倍だ。

 今回の大相場で特筆すべきは、売買代金の急増だ。15年4月20日に上海市場の売買代金は初めて1兆元を突破。これは過去最高値を記録した日の約7倍、同日の東証株式売買代金の約8倍に相当する。この大商いを読み解くには、過去に目を向ける必要がある。
 08年の世界的不況を受け、中国経済は急速に悪化し、デフレに突入。中国は4兆元の景気対策を実行し、経済は早急に立ち直ったが、マネーがばらまかれた結果、今度はインフレが発生した。これを抑えるため金融が引き締められたが、マネーの膨張は持続。15年5月末のマネーサプライは、07年10月末の3倍以上に達した。

 マネーは膨張を続けたが、投資家は金融引き締めを恐れて株式に手を出さず、不動産投資などに熱中。これが5年余りの株価低迷につながった。株式市場の停滞を打ち破ったのは、14年11月の利下げ。この金融緩和を機に、膨大なマネーが株式に流れ、今回の大相場を作り出した。

 上海総合指数が過去最高値を更新する可能性は、まだ残っているだろう。マネーは8年前の3倍に膨らみ、相場を支える流動性は十分にある。また、出遅れている大型銀行株が、上海総合指数を押し上げる余地もある。大型銀行株の配当利回りは預金金利を大幅に上回っており、利下げが続けば、魅力が増すからだ。

 上海A株市場のPERは15年7月1日で19.85倍。東証1部の18.75倍をやや上回る程度であり、上海総合指数が過去最高値を記録した時の71.44倍を大きく下回っている。割高感は鮮明ではない。個人投資家の売買が8割と言われる市場だけに、投資マインドの改善が今後のカギとなるだろう。

<プロフィール>
中国株情報の発信に10年あまり携わる。大学院修了後、上海市の復旦大学に2年間留学。ニュース配信会社の駐在員として広東省広州市に1年間赴任。中国の現地事情や社会・文化にも詳しい。

編集企画:株経通信(株式会社みんかぶ)     【夏の相場観】特集 より

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