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【特集】【TPP相場観】米国主導でアジアに新秩序作り /武者陵司氏

武者リサーチ 代表 武者陵司氏

 中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)への賛同が広がり、設立がほぼ確実になったことにより、米国の地政学的危機意識が急速に高まっている。アジアで米国主導の秩序が維持発展するためにはTPPの創設が必須との認識が共有されている。米国議会ではTPA(貿易促進権限)法案の審議が進展し、法案成立の見通しが高まってきたのもそのためである。オバマ大統領はこのままいけば20、30年後に米国企業がアジアから締め出されることも起こりかねないと発言し、米国と異なる価値観を維持しつつ覇権国として台頭する中国に対する警戒感を如実に示した。

 TPPは当初地域内の自由貿易圏創設のこころみであったが変質し、今ではアジアの新たな秩序作りの骨格となっている。貿易自由化への取り組みはもとより、経済同盟へと国家間の連携は進んでいくだろう。関税貿易のみならず、各国国内のビジネスルールの統一化、政府調達、知的所有権、金融・投資、電子取引、環境、労働などの等質化、など加盟国の同質化を推進。経済秩序から地政学秩序へと深化する公算が強まる。(現体制ではどうしても加盟が困難な)中国を除く経済圏の創設、チャイナプラスワンから中国抜きの経済連携へと展開し、中国代替を加速するものになるだろう。

 日本経済に対する最大のメリットは、米国をコアとする国際分業体制における日本の比較優位が明確になり、日本の強みがより強く、品質、技術優位の日本製品、日本のサービスがより広範に受け入れられることであろう。世界最大、最速で中産階級が増加するアジアの需要を、分業の一員として取り込める意義は著しく大きい。日本の農業もその品質と安全性により、多くの需要を獲得するとみられる。

 株式市場への好影響は特に大きい。地政学的安定性が経済と株式繁栄の基礎であり、それが固まる意義は大きい。世界の投資家の日本株投資への安心感を大きく高めアジアの最中核国としての日本を浮き上がらせるだろう。

編集企画:株経通信(株式会社みんかぶ)     【TPP相場観】特集 より

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