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【特集】【TPP相場観】オバマ政権、大統領選控え妥結急ぐ /河合達憲氏

カブドットコム証券 チーフストラテジスト 河合達憲氏

 まず、環太平洋経済連携協定(TPP)合意に不可欠とされる米大統領に通商交渉の権限を与える貿易促進権限(TPA)法案の米議会での成立が先決問題となる。13年ぶりに大統領に強力な権限を与えるTPA法案を早期に成立させる必要がある。

 オバマ米大統領は、今秋までのTPP妥結を迫られている。11月からは次期大統領選が本格的にスタートし、政治の季節一色となるため、その前にどうしてもメドをつけたい事情がある。そのためには、5月中にも事務レベルでの合意が必要とされる。

 日本にとって、TPP妥結の焦点として、「農産物」と「完成車および自動車部品」の両分野が象徴的といえる。政府は、農産物の輸入関税を引き下げる前提として、昨年6月に策定した成長戦略のなかで、“日本の農業を成長戦略に転換する”方針を打ち出した。同時に、政府主導の農協改革により、全国農業協同組合中央会(JA全中)の権限を縮小させて、農業関連ビジネスの規制緩和を図っていく。

 例えば農薬を例にとると、これまでJA全農は、主要農薬メーカーの主要販売先としての地位を占めることで、その安全性確保や価格決定に強い影響力を発揮してきた。今回その規制が緩和されることで、クミアイ化学工業<4996>、日本農薬<4997>、日産化学工業<4021>などの農薬メーカーは、社内の営業部門強化を迫られるものの、一方で、海外を含めてこれまで実績の乏しかった新たな販売先開拓のチャンスとなりそうだ。また、サカタのタネ<1377>、カネコ種苗<1376>などの種苗メーカーも同様の影響が見込まれる。さらに、国内農業の大規模化や効率化に伴いクボタ<6326>、井関農機<6310>の農機メーカー。関税引き下げに伴い原材料価格の軽減が見込める山崎製パン<2212>、明治ホールディングス<2269>、日本ハム<2282>、六甲バター<2266>の食品株にもメリットが予想される。

 一方、完成車や自動車部品の米国での輸入関税が引き下げられることで、日本精工<6471>などの自動車部品メーカーに加え、自動車の現地生産拡大に伴い牧野フライス製作所<6135>、オークマ<6103>の自動車製造向け工作機械メーカーも注目だ。

編集企画:株経通信(株式会社みんかぶ)     【TPP相場観】特集 より

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