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【市況】【井上哲男のストラテジー・アイ】


「5月中旬前に知っておくべきこと」

 早いもので、今年ももうすぐ3分の1が経過する。今週の火曜日(14日)、欧州市場はギリシャ国債のデフォルトの可能性が高まったとの観測から下落したが、米国市場はこの材料には無反応でNYダウは60ドル程度の上昇となり、終値で再度1万8000ドル台(1万8036ドル)に戻した。

 しかし、このダウの水準であるが、昨年末のクリスマス・イブの終値が1万8030ドルであったことを考えると、5ヵ月程度の上昇率がほぼゼロであったことが分かる。

 一方で、日経平均株価は同期間で、1万7854円から1万9908円と11.5%も上昇している。前回の寄稿でGPIFや共済の日本株組み入れ比率上昇による“官製相場”と、それを見越した外国人の需給動向について説明したが、この上昇率の差は、この需給以外の部分も要因として考えられる。

●日米の1株あたり利益の明暗

 以前、需給要因に不透明感が無い時期は、やや短期的な指数の動きはテクニカル分析が有効で、中長期的な高値・安値の目途の計測には、世界市場の相対的なPERとそのスプレッドに着目するアプローチについて述べた。

 現在の全米PERは19.2倍、クリスマス時点でのそれは17.8倍となっている。米国株の水準がほぼ変わっていないことを考えると、これは米国の上場企業の1株あたり利益が7.3%も減少していることを意味している。それでは日経平均はどうかというと、1株あたり利益は1.6%増加している。

 この絶対値の合計は8.9%という数字となり、前述の11.5%の上昇率の差の8割程度は業績で説明できることになる。(為替水準は?という質問が出るかもしれないが、両時点のドル/円は120.45円、119.40円であり、0.6%程度の小幅な円高推移であり、この影響は考えなくてもよい)。

●高値を占う2つのポイント

 それでは世界市場のPERがリーマンショックを経てどのように推移してきたかというと、全米PERが欧州2国(ドイツ〔DAX〕とフランス〔CAC〕)の平均PERを1.5年から3年程度上回る水準にあり、そのレンジの中に日経平均PERがいるという状態であった。

 因みに、現在の水準は、全米:19.2倍、日経平均:17.7倍、欧州2国平均:17.5倍である。

 つまり、この先、米国のPERがどこまで上昇できるかが、まずは今年の高値レベルを予想する際の第一のポイントとなる。

 全米PERは2012年末、2013年末に18倍の壁で撥ね返されたが、今年2月にその壁を越え、次の心理的な目途はやはり20倍であろう。

 となると、日経平均のPERの目途も18倍から18.5倍と考えるのが自然である。

 次のポイントは、日経平均の1株あたり利益がどのくらい増加するかである。2015年度の増益率を3%、全米PER20倍、日経平均PER18倍と仮定すると、日経平均は2万0800円の2000年4月につけた高値に並ぶことになる。

 この増益率の見込みが、大手外資系の試算で20%近くになるというレポートが出されたが、全ては“45日ルール”のもと、5月中旬に明らかになる。見込み数字が確定した後に再度水準を載せることとする。

●個別銘柄の紹介 アールテック <4573> [JQ]

 昨年2月に株価1100円水準で推奨した同社を再度狙う。株価は今年2月に2300円台にまで上昇した後、開発中の点眼液に対する第3相臨床試験の結果から大きく売られて現在は1200円台となっているが、同社は単なる創薬ベンチャーではない。

 32年ぶりに日本で便秘薬として認可されたアミティーザと緑内障治療剤レスキュラの2本柱が好調で終わった3月期の見込みベースの営業利益率は31.8%と極めて高い。弊社の経営指標ランキングの総合順位は医薬品57社中、第1位。PER15倍割れは極めて割安に映る。

2015年4月16日 記

スプリングキャピタル株式会社 代表
井上哲男

(「チャートブック週足集」No.2021より転載)

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