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【市況】【植木靖男の相場展望】


「歴史的快挙を支えた好環境」

●いまが最も居心地がよい

 株式市場に春が近づいている。というより、もはや春に突入した感がある。三寒四温どころか四温四温状態だ。

 2月19日は歴史的な快挙となった。07年7月高値1万8261円(終値ベース)を突破したのだ。10年に一度、二度という天井を上抜くのは容易ではない。

 よほど市場環境が劇的に変化しない限り上抜けないからだ。個別銘柄でみても、イノベーションで画期的な新製品を開発するとか、業態ががらっと変化するようなことが必要だ。

 そこで改めて昨今の市場環境を考えてみたい。

 マクロで見ると、10年以上もわが国経済を苦しめてきた上値圧力、つまり円高とデフレという上蓋が取れたことが大きな変化だ。

 為替については目下、1ドル=70円台から一気に120円台の円安に傾いた反動として、いまもみ合いに推移している。いわゆる中段の保ち合いにある。

 13年5月から10月頃まで約半年ほどのもみ合いがあったが、それと同程度の日柄が必要とすれば、今年後半からは再び円安基調に戻る可能性が大きい。

 脱デフレは近い。日銀がめざす2%のCPIは原油安もあって2年内での達成は困難視されているが、実質賃金は上昇に転じる公算が大きい。CPIが伸び悩む一方で、賃上げの動きは自動車、電機から鉄鋼へと広がっている。

 景気は消費増税の影響も薄らぎ、賃上げによる消費拡大が見られれば着実に回復に向かうことになろう。

 一方、ミクロ面では企業収益は拡大している。今3月期は前期比3%ほど経常利益ベースで改善、金融危機前の過去最高だった08年3月期を上回ると予想されている。来期は原油安効果が一段と収益を押し上げる。輸出を後押しする世界経済の好転も見逃せない。

 需給面からみても大きな変革を見せている。GPIFの運用見直しや日銀のETF買いはまさに歴史的変化といってよいだろう。

 これまで警戒材料とされたウクライナ情勢、ギリシャ問題にしても世界経済を震撼させるような事態にはならないだろう。

 かくして株式市場にとっていまは年内で最も好ましい市場環境にあるのではないだろうか。

●昨年10月安値の業種に妙味

 こうした状況を踏まえて今後の株価を展望してみる。

 今後の高値はいつ頃なのか。スタート時点から判断してみたい。仮に昨年10月安値を重視すれば、3月末から4月にかけてと読めるし、昨年5月安値をそれとすれば、5月末頃と予測される。いずれにしても、今年前半に大きなヤマ場が訪れるとみたい。

 では、その間の物色はどう考えればよいのか。

 毎回、同じことを繰り返すが、株価水準が高くなるということは、個別なり業種なりが循環的に物色されるからだ。だとすれば、当然のことながら、指数が最も確実にリターンが得られるということだ。したがって、指数連動型のETFが資金効率がよいということ。

 業種でみると、昨年10月に指数と同じに安値を付けた業種が常識的に妙味ありと思われる。

 たとえば証券、不動産、海運、その他金融などだ。具体的に個別でみると、野村 <8604> 、もみ合いに入った東急不HD <3289> 、また海運では郵船 <9101> の底力に期待したい。

 このほかでは、まだ安値圏にある銘柄として金融のりそなHD <8308> だ。日生、第一生命と提携、さらに公的資金を今夏に完済することで割安修正の動きが強まろう。

 また、絶好の押し目を付けたIHI <7013> も中長期で狙いたい。

2015年2月27日 記

「チャートブック月足集」No.377より転載
(「株探」編集部)

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