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【市況】【杉村富生の短期相場観測】

「常にパニックは政策の母!」

●肝要なのはトレンドの確認!

 肝要なのは現状を正しく認識すること!と筆者は主張している。いわゆる、トレンド(方向→大きな流れ)の確認である。

 最近の証券マスコミ、大手証券は目先の解説にこだわりすぎる。

 すなわち、「今日の株価は…」と、上がった、下げたといった分析記事(コメント)が多い。もちろん、これも大切である。しかし、あまりに足元の動きに目を奪われていると、大勢観を見失う。

 基本(トレンド)は円安・株高である。安倍政権、および日銀(黒田総裁)は資産インフレの創出を狙っている。

 それに、日本株は出遅れが著しい。割負けている。日経平均株価は金融危機(サブプライムローン・ショック、リーマン・ショック、南欧諸国のソブリンリスク)前の高値(2007年7月9日の1万8261円)をいまだに抜いていない。これはどうしたことか。

●出遅れが著しい日本株!

 ちなみに、NYダウは直近高値で見ると金融危機前の高値(2007年10月9日の1万4164ドル)を27.3%上回っている。“震源地”は欧米だったのに。もちろん、日本株が出遅れるにはそれなりの理由(要因)があったと思う。

 その理由とは? 旧民主党政権の迷走、前任の白川日銀総裁の存在(円高、デフレを容認)に加え、1ドル=75円台の超円高、中国での反日暴動、東日本大震災などがあった。しかし、これらの悪材料の多くが消えた。すなわち、安倍政権の誕生、黒田日銀総裁の登場である。

 安倍政権はアベノミクス(3本の矢)を推進、日本再生→失われた20年の克服を目指している。

 黒田日銀総裁は非伝統的な異次元の金融緩和を断行している。その狙いは円高阻止→デフレ脱却にある。

●マネタリーベースが激増!

 マネタリーベース(市中に出回っているお金の量)は2013年3月の135兆円が2013年末には193兆円、2014年末には275兆円と急増した。日銀の計画ではこれを2015年末には355兆円とする。

 これは円安・株高要因となる。日銀はETF(買い入れ枠3兆円)、REIT(同9000億円)も買っている。

 さらに、GPIFの日本株の買い入れ余力は運用体制の見直しによって11兆円、外国証券の買い入れ余力は22兆円増えた。これが政策対応である。

 もちろん、これだけではない。企業の姿勢も変わった。増配、自社株買いが相次いでいる。この背景には機関投資家の行動規範を定めたスチュワードシップ・コードの導入、経営サイドのルール、コーポレートガバナンス・コードの運用厳格化などがある。

 ROE、配当性向を経営目標に掲げる企業が続出している。これは投資価値の向上につながる。

 一方、外部環境はどうか。原油価格が下げ止まり、ギリシャ問題は落ち着きを取り戻しつつある。まあ、再三指摘しているように、パニックは政策の母!という。

●この局面での狙い目は?

 そう、マーケットが動揺し、人々がパニックに陥るたびに政策対応は強化される。そして、最後は政策総動員態勢となる。これが歴史の教訓である。ECBはついに、QEに踏み切ったではないか。

 ECBは2015年3月~2016年9月に、国債などのリスク資産を月間600億ユーロ、総額1.1兆ユーロ買う。

 物色面では、割安の三菱UFJ <8306> 、短期的に売られすぎのマツダ <7261> 、ソニー <6758> 、好業績のサイバー <4751> などが狙い目だろう。

 小物では引き続いてラオックス <8202> [東証2]、ミクシィ <2121> [東証M]、UNITED <2497> [東証M]、サイジニア <6031> [東証M]、ファンクリG <3266> [JQ]などに注目できる。

2015年2月4日 記
(「チャートブック日足集」No.1557より転載)
(「株探」編集部)

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