【特集】【エヌビディア⑧】「チャットGPT」の衝撃! 一躍、世界の中心に<Buy&Hold STORIES-5->

エヌビディア<NVDA>
第3章Part8
- 第1章 ジェンスン・フアンとは何者か? 海を越えた異才が目指したもの
- 第2章 GPUが最強半導体に変貌した日
- 第3章 生成AIブーム到来! 世界のハイテク産業の盟主に躍進
第3章 生成AIブーム到来! 世界のハイテク産業の盟主に躍進
8.「チャットGPT」の衝撃! 一躍、世界の中心に

※株価単位はドル。株式分割を反映後の修正値
"ダブルショック"で株価は3分の1に、生成AIブーム前夜の苦悩
世界を混乱に陥れた新型コロナパンデミックとそれに伴う"コロナ特需"は、GPU(画像処理半導体)のトップメーカー、エヌビディア<NVDA>に二つの恩恵をもたらした。一つは巣ごもり需要の拡大による祖業のゲーミング用GPUの売り上げ急増。もう一つは、リモートワークの定着によるデータセンター向け半導体需要の急拡大だ。
2022年1月期は売上高が前年比60%増、営業利益と最終利益は2倍以上に増加し、株式マーケットからはすでにインテル<INTC>やアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD) <AMD>などの老舗半導体メーカーを凌ぐ成長ポテンシャルを持つ企業と受け止められていた。だが、FRB(米連邦制度準備理事会)が利上げを開始し、社会が脱コロナへ動き出すと、ハイテク企業に集中していた投資マネーは徐々に引き揚げられ、それと軌を合わせるように同社株も下落していった。
マクロの金融情勢の変化とともに、22年に入ると業績面でも逆風が吹き始めていた。この要因となったのが、前年までGPU需要の多くを占めていた暗号資産のマイニング・ユーザーの急減だ。同社のGPU、「GeForce(ジーフォース)」シリーズは本来、ゲーミング用途に設計されたグラフィックチップだったが、17年ごろから暗号資産のマイニングに応用できることがインターネットを通して広がり、一時は暗号資産の投資家とゲームーユーザーとの間でGPUを巡って争奪戦が繰り広げられる状態になった。
需要が増えること自体は同社にとって歓迎すべきことだ。しかし、暗号資産は、その他の金融資産と比べてボラティリティ(変動率)が高いという特性を持っている。そのため、暗号資産が急騰する度に投資家が急増してGPUが品薄になり、急落すると一転して在庫がダブついてしまう、という極端なサイクルに陥ってしまいがちだ。20年1月期にも暗号資産暴落の影響で業績が急速に悪化したことがあったが、22年に入ってこの問題が再燃したのだ。
23年1月期が始まった当初は、巣ごもり需要の減少によってゲーミング用途の売上高が伸び悩むことはある程度予測されていたが、データセンター向け需要の拡大が相殺し、同社全体の業績は拡大していくだろうと見られていた。だが、前年の22年1月期の好決算は、想定以上にコロナ禍で再びブームとなった暗号資産の需要が大きな割合を占めていたことが徐々に明らかになっていった。
この年前半の暗号資産相場の低迷によって、再びGPUの需要が急減。さらに2月24日に始まったロシア軍のウクライナ侵攻、そして春先の上海ロックダウンといった地政学的な要因が追い打ちをかけ、第2四半期(22年5-7月期)の売上高は、当初の会社予想を17%下回った。特に、ゲーミング用GPUの落ち込みは顕著で、前年同期の30億6100万ドルから33%減の20億4200万ドルへと、大幅に減少した。
「当社のゲーム関連製品の販売予測は、四半期ごとに落ち込んでいる」。CEOのジェンスン・フアンもそう声明を出さざるを得なかった。株価は前年11月22日に付けた34.65ドル(その後の株式分割反映値、以下同)の高値から右肩下がりで下落し、10月13日に10.81ドルの安値を付けるまで下げ止まらなかった。同社がAI(人工知能)の盟主として、時価総額首位の地位を獲得するわずか1年半前のことである。
"バケモノ級"の最先端GPU「Hopper(ホッパー)」を発表
目先の業績と株価こそ低迷を余儀なくされたエヌビディアだったが、少し視点を変えると、22年の同社からは別の姿が見えてくる。ゲーミング用途のGPUなど、「グラフィックス」部門の落ち込みと反比例するように、データセンター向けGPUを中心とした「コンピュート&ネットワーキング」部門が順調に成長。同社はこの分野で新たな施策を次々と打ち出し、次の飛躍へ向けて着々と準備を進めていたのだ。
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