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米中対立でベトナムに商機【フィスコ・コラム】


米中両国は相互に関税率を引き上げるなど、貿易戦争に突き進んでいるように思えます。ただ、それにより周辺のアジアにビジネス・チャンスが広がりそうです。とりわけ、技術大国として躍進中のベトナムへの上昇気流となるでしょう。


アメリカの知的財産権保護などを主要議題とした米中貿易交渉は合意間近とみられていました。ところが、5月入って事態は急変。中国側の後退を主張するアメリカと、アメリカ側の強硬姿勢を嫌気した中国の認識の違いから対立が表面化し、協議は事実上決裂してしまいます。それにより、春先以降は改善しつつあった世界経済も、再び減速への懸念が強まり市場センチメントが悪化しています。


この米中の対立は、周辺各国にどのような影響を与えるでしょうか。米中間の貿易の一部が高い税率を免れようと第三国との貿易に移行する効果が見込まれ、アジア各国にとっては追い風となりそうです。ある機関の調査によると、産業別では電子・電機産業への影響が大きいとみられています。そうなると、韓国サムスンの進出で今やスマートフォンの一大拠点となったベトナムが脚光を浴びるでしょう。


実際、ベトナムは輸出入に必要な物流インフラの整備や、4年間の法人税免除といった税制優遇措置もあり、東アジアにおける生産拠点として魅力が高まっているようです。人口が2060年まで増え続けると予測され、労働人口も豊富であるうえ技術者の技能が高いことでも知られています。しかも、賃金が中国の3割程度と人件費が割安で、中国の代替拠点として申し分のない条件をそろえています。


ベトナムの2018年の国内総生産(GDP)成長率は+7.1%と、中国の+6.6%を大きく上回り+7.3%と世界トップのインドに迫りました。世界銀行は2019年の経済見通しでベトナムの成長率を+6.6%と、2017年の+6.8%を下回る減速を予想していますが、米中協議の難航で上方修正される可能性もあります。引き続き高成長を維持できれば、こうした強い経済基盤は国際的にも一段と信用を高めるでしょう。


米中交渉の行方が注目されていた5月9日、英格付け会社フィッチ・レーティングスはベトナムの外貨・VND建て長期発行体格付けを「BB」に据え置く一方、見通しを「安定的」から「ポジティブ」に引き上げました。安定的に拡大する国内経済、成長に連動して上昇基調が続くインフレなど、様々なリスク要因に対応可能と評価したためです。米中貿易戦争により、さらに評価を引き上げるかもしれません。


1970年代に泥沼化したベトナム戦争の相手国アメリカとは1995年に国交を正常化。以来、経済と安全保障やビジネスで交流を深めています。トランプ米大統領はツイッター上で、中国側が交渉に応じなければビジネスはベトナムなどに移るなどと揺さぶりをかけました。その作戦は中国の大国としての意地に火をつけてしまい、協議は事実上の決裂。事態はベトナムにとって好ましい方向に進んでいるようです。
(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《SK》

 提供:フィスコ

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